轟く雷鳴 前編
〈第5章 轟く雷鳴〉
夜の廃ビル。
ここがぬらりひょんの密〈ひそか〉だ。
そしてここが数時間後 戦場になる。
茨木大輝とぬらりひょんの
バトルフィールドに。
*********
こんにちはみなさん
霜月小雪です。
今私は黄昏ています。
大輝君にフラれて1週間。
ずっとこんな感じです。
その大輝君は今日、例のテストをしている頃だと思います。
頑張っているところだろう。
私はフラれてから一度も大輝君に勉強を教えてあげてない。
気まずいから、悲しくなって泣きたくなるから、私は大輝君に勉強を教えてあげれなかった。
私が黄昏ていると香奈ちゃんが話しかけてくる。
「どうしたの?
小雪ちゃんこの頃いつもこんな感じだけど大丈夫?」
「うん.. . 大丈夫」
いかにも大丈夫じゃない声ではない。
女性の勘なのか香奈ちゃんが言う。
「うんうん、大丈夫じゃないよ。
何となくだけど小雪ちゃんすごくショックうけてるってわかるもん。
たぶんあの大輝君のことだってことも何となくわかる」
すべて当たっている。
私は今思ったことをいう。
「香奈ちゃんはエスパーなの?すべて当たってるよ...」
クスリと笑った香奈ちゃん
私、可笑しなこと言ったかな?
香奈ちゃんが言う。
「当たってたんだ
ふふ、女の勘って怖いね」
香奈ちゃんは笑いだす。
ふふ 私もなんか釣られて笑ってしまう。
二人で笑う。
声をだして。
まさしく青春って感じだ。
静かな教室に目立つ二人の女子生徒の笑い声。
平凡だ。
実に平凡だ。
そして私はこう思った。
例え大輝君がいなくなったとしても私にはこんな友達がいる!と
一回、大輝君の事は忘れよう。
彼はただの居候だ。
彼はただの同居人だ。
それでもそれ以上でもない。
なぜ私と大輝君が同居してるの?と思う人もいるだろう。
私は入学式の時、妖怪に取りつかれた。
それを祓ってくれると大輝君は私の目と前に現れた。
しかし私に取りついている妖怪はまだ祓えていない。
それを絶対祓ってやる!だから同居してくれ、と言われ嫌々同居しているわけです。
そしてそれ以降妖怪に襲われるという、とても奇妙な事が起きている。
だから今の状況がとても平凡だと思う。
そしてそうゆう妖怪問題を解決してくれるのはだいたい大輝君!!
っというわけじゃないか。
この前の河童の事件を解決したのは泉直人君だ。
彼らは陰陽師。
泉直人君は普通の人間の陰陽師。
だが大輝君は人間ではない。
半妖
半分人間で半分妖怪
イレギュラー
普通ではない生き物なんだ。
私は彼の人格をふたつ知っている。
まず、人間の時の人格。
ニコニコして明るい
そして優しい
それが人間の時の大輝君
そして妖怪の時は
ドS で変態。
女たらし
というとても最悪な人格
でもこの二つの人格にはやはり同じ共通点がある。
それは...大切な者を守るという意思だ。
その大切な者というのは私なのだ。
なぜだろう。
なぜ私なんだろう。
それは詳しくはわからない。今度聞いてみよう。
ったまた大輝君のこと考えてた。
ダメダメ!
こんなじゃダメ!
よし!いつも通りいこう!
黄昏ているのはもうやめだ!
「少し元気になったよ!
ありがとう!香奈ちゃん!」
「いいえ!良かった!
いつもの明るい小雪ちゃんだ!」
また二人で笑う。
キーンコーンカーンコーン
授業の始まりのチャイムが鳴る。
*********
俺、茨木大輝は緊張している!!
な、なぜならあと10分で例のテストが始まるのだ!
とにかく心配だ!
この10分は復習をしておこう。
俺は今までやってきたことを存分に発揮できるようにまたいつも通りに勉強を始めた。
小雪ちゃんが教えてくれなかったこの一週間の勉強はとてつもなく絶望的であった。
10問中全問ハズレだなんてしょっちゅうあることだった。〈特に数学〉
幸い、小雪ちゃんに習ったところがメインだったから助かった。
カキカキカキと問題を解く
残り5分の時俺の携帯が鳴る。
「こんな時に誰からだ?」
着信相手を見てみると[陰陽師]という名が。
ったく面倒な人からだ。
でも出ないわけにもいかない。
俺は電話にでた。
「はい、戦闘班の茨木大輝です」
《やぁ君が半妖の茨木大輝君だね》
「はい」
あれ?いつも声がちがう。
いつもはゴッツイおっさんの声なのに、今日は爽やか系のおじさんの声だ。
というかこの声は聞いたことがある。
てかこの声って!
《あれ?忘れてしまったかな?
ま、あんな事件が起きたんだ。忘れていてもしょうがないか。
じゃあ改めて、
私の名前は阿倍野波流斗
〈あべのはると〉
久々に君の声が聞きたくてね》と阿倍野さんは言う!
やべぇ!!
阿倍野さんは俺のことを覚えててくれた!!
てか覚えていないといけないか。
陰陽師の現トップだもんな
俺のあの事件は覚えていないと。
俺は言う
「覚えていましたよ!
というかなぜ俺、僕の声なんかききたくなったんですか?」
《何となくだよ》
と波流斗さん。
やっぱこの人は優しい!
その後俺は波流斗さんと話していた。
キーンコーンカーンコーン
授業始まりのチャイム!
あ!
俺まったく勉強してない!
てか通話をやめないと!
「阿倍野さん!
すみません!
少し用事があるので通話をやめたいんですが.. 」
《あぁわかったよ》
「本当にすみません!
それではまた」
俺が電話を切ろうとすると引き留める阿倍野さん
《あ、待ちたまえ大輝君》
「は、はい!」
ガラガラガラ
俺のいる教室に数学の教師であり今回のテストの監視官である川澄先生がいらっしゃった。
先生に俺は言う。
「すみません!
少し!」
先生はニッコリと笑って
教卓の椅子に座った。
優しそうな先生だ。
すると阿倍野さんが言う。
《すまないね
時間をとってるみたいで》
「い、いえ!
とりあえず数秒なら大丈夫です」
《そうかい、なら手短に知らせよう》
知らせる!?
なにかあったのか!
いや何かあったに違いない
阿倍野さんがどっ直球に言う。
《ぬらりひょんが動き始めた》
なにぃ!
ついにか!
ついにやつらが!!
《まぁ気を付けてくれというわけだ》
「わかりました。
用心します」
《あぁ、それじゃあその用事というものをがんばってくれ》
「はい!がんばります!」
プツンッ
電話が切れた。
俺は先生に言う。
「すみません!
ちょいと仕事柄の話が長くなっちゃって」
「いいですよ。
仕事がんばってるんですね
感心します」
ホントこの人も優しい。
先生がテストを配る。
「まずは数学からです
がんばってください」
先生はニッコリ笑う。
「はい!」
俺の第一回目の戦いが始まった。
*******
大輝や小雪達が勉学に励んでいるとき、ある廃ビルではある作戦をしようとしていた。
その廃ビルにいるのは頭が異常に長い老人、つまりぬらりひょんとその仲間達、
数は5人、みんな黒いフードを被っている。
その5人の黒フード達はぬらりひょんを囲むようにして座っている。
ぬらりひょんはキセルを吹きながらそのシワシワな口を開く
「さて、お主達にはある女を拐ってほしいのじゃよ」
その要求に部下達らしきもの達が騒ぎだす。
「ほぉ?人拐いですか。
しかも女!」
「こいつはめでたいですな!親方ー」
「・・・」
「どんな!どんな味なんだろうなぁ!!」
騒いでいる部下のなかに一人だけ大人しいやつがいる。
そいつのは顔は烏、
体は人間。
烏天狗だ。
〈からすてんぐ〉
こいつだけはフードをとっていた。
その烏天狗は言う。
「誘拐はこの烏天狗が行いましょう。
で、ボスよ、人物とその名を教えてください」
「わかった」
ぬらりひょんが懐の写真を部下に見せる。
そこに写っているのは
霜月小雪だ。
「名は霜月小雪、
ここの近くの高校に通っている」
烏天狗が気づく。
「霜月小雪というとつい最近、kappas〈カッパーズ〉とあの雪女が殺害をしようとした人間だったはず」
ぬらりひょんはふぅーと口からもくもくと煙を吐き
言う
「そう。
そやつらはある男達によって殺された。
その男達を殺すのが今回のミッション!」
「つまりこの女は囮」
一人の背のでかい部下が言う。
「そうじゃ。だからこの女は生かしおいてくれ。
なぁーにミッション後、ヤるなり殺すなり、それはお主達に任せる」
さらに騒ぐ部下達、
烏天狗はぬらりひょんに聞く。
「その女を囮にして、
一体どんな奴を誘き寄るのですか?
kappasはともかく雪女を倒せるほどの人間なんて
陰陽師でもなかなかいない」
またふぅーと煙を吐きながらぬらりひょんは言う。
「その陰陽師はイレギュラーなんじゃよ」
「イレギュラー!?」
「そう。イレギュラー
つまり半妖なんじゃ」
半妖という単語で辺りの欲望の騒ぎは、【珍しいものを見た!】というような騒ぎ方に変わった。
「半妖とな!
こりゃあたまげた、
ボス、人間となんのハーフなのよ?」
また背のでかい部下が言う。
「やつは茨木童子と人間のハーフじゃ。
まぁハーフというより力を持っているという所じゃ。
詳しくは知らんが人間の時と妖怪の時の人格があるとか。
まあ多重人格みたいな者じゃな」
烏天狗がぬらりひょんに聞く。
「そのイレギュラーの名をご存じであれば教えてください!」
ぬらりひょんが言う。
「名は茨木大輝!
今晩!この男を殺す!
そしてわしらの力をあの生意気な小僧に見せつけてやるのじゃ!!」
背のでかい部下が言う。
「あの黒フードで威張っているあいつにか!!
いいだろう!俺が殺す!」
「いや、わしが殺す。
一つ目は邪魔者が来たらそっちに向かってくれ」
一つ目と言われたこのでかい部下は
「あいよ。やっぱぬらりひょんはんは最高ですワイ♪」と言う。
烏天狗以外の者達は騒いでいる。
そしてぬらりひょんは心の中ではこう思っていた。
老人だからバカにしよって!
あの小僧の位地にこのぬらりひょんが昇ってやる!!
と。
ぬらりひょんはニッコリと恐怖の笑みをするのだ。
決戦のゴングが鳴り響くまでの時間が近づいてくる。
********
今は昼休み
俺の名は泉直人
〈いずみなおと〉
まぁ、知ってようが知らなかろうが俺には関係ないから気にしないでくれ。
さて今は昼休み、どっかの二人の女子はいつも通り楽しそうに飯を食べていて、
どっかのがり勉野郎はいつも通り三度の飯より勉強だ、そしてどっかのラブラブカップルは
「はい!裕君、あーん♪」
「あーん」
とこんな感じにリア充生活を楽しんでらっしゃる。
俺はどうなんだって?
俺はいつもの通り寝ている。
机に横になってな。
こうしているととても落ち着くのだ。
俺はふと時計をみる。
おっとそろそろ飯を買ってこないと売店のパンがなくなっちまう。
俺は起きて売店に向かう。
売店は一階にある。
俺ら1年の教室は2階だ。
この学校はそこまで広くないので移動はゆっくりでもこの時間なら問題ない。
そして歩くこと2分。
俺は売店につきいつも通りのパンを買う。
そして近くの自動販売機で缶コーヒーを買っていく。
いつもそこの自動販売機は
人がいない、なぜなら売店で買っていく人が多いからだ。
だが売店で買うより自動販売機で買ったほうが10円安いので俺はそっちで買っている。
10円くらい、いいじゃんと思う人もいるだろう。
だが110円のものが100円になんだ。
ワンコインなんだ。
〈ちなみにパンも100円〉
合計で200円!
金がかかんなくていいじゃあないか!
いらない小銭が増えなくていいじゃあないか!
まぁ、俺は貧乏なんで少しでも安くしたいというケチな場面がそうしたのだろう。
さてそのいつも通りコーヒーを買って...
俺は自動販売機の近くで立ち尽くしてしまった。
なぜって?
おかしい!ここは誰も素通りしていくはずなのに!
一人の男子がいたのだ。
その男子は言う。
「ここの自動販売機!
コーラーが120円だ!
やっすい!!普通160円だぜ!?
経済的に大丈夫なのか??
まぁ安いのは特だから2本くらい買っていこう」
な、なんだこいつはぁあ!
え!!
誰こいつ!!
見たことのないやつだ!!
男子がこっちに気づき近づいてくる。
「なぁ!君!」
「な、なんだよ..」
警戒度MAX !
「昇降口ってどこ?」
・・・
「はぁ?」
「いやさ!俺これから帰るんだけどさ、昇降口がわかんなくて困ってたんだ!
そしてたらここの自動販売機を見っけて飲み物を買ったんだ!
君もあそこで買いな!
あそこのコーラ安いよ!」
こいつ頭がイっちまってるのか!!!?
自分の通う学校の昇降口を忘れるなんて!
まぁいいこれ以上付き合っていられない。
俺は簡単に昇降口を教えてやった。
「あ、真逆なの」
「あぁ、あんた大丈夫なのか?一応病院行ったほうが...」
「大丈夫だ、問題ない」
問題おおありだよ!
「ま、昇降口の位置がわかってよかった!ありがと!」
「あ、あぁ」
男子は去っていく。
「あいつ大丈夫かな」
ま、こんな感じで俺の昼休みは終わったのだ。
さ、午後の授業だ。
*******
午後の授業も終わって私、霜月小雪は下校をしていた。
大輝君は大丈夫だろうか
今日一日くらい大輝君を忘れようと思ったけどやっぱダメだった。
私はすぐに大輝君に会いたいと言う欲望に駆られていた。
私は少し早歩きで大輝君のいる家を目指す。
すると嫌な気配に乗り込まれる!
「な、なに!」
振り向くが誰もいない。
気味が悪い!
私は早歩きから普通の走りに変えた!
すると空から羽が落ちてきた。
黒い羽だ。
私は頭上をみる。
そこには鳥人間!いや
黒いから烏だろう!
が飛んでいた!
「ば、化け物!!」
いや!妖怪だ!!
私の家まであとすこし!
がんばれ私!!
だがすぐに捕まってしまう!
私を捕まえた烏人間は言う。
「お前が霜月小雪だな。
ボスの命令で誘拐させてもらうぞ」
「大輝く!..」
叫ぼうとしたらあて身をやられ私は気を失った。
私が気がつくとそこはさっきの道ではなかった。
廃ビルであった。
*******
小雪が拐われて2時間がすぎた。
茨木大輝は・・・
完全に力尽きていた。
家に帰ってきたのが1時半
そこから小雪母、寧々
〈ねね〉に連れられデパートに買い物
そこからの柊との遊びでとても疲れていたのだった。
だがそんな中寧々が大輝の部屋に来てこう言う。
「もう7時頃なのに小雪ちゃんが帰ってこないのよ
今私は忙しいからメール打ってもらっていい?」
「はい。いいですよ」
大輝は小雪にメールを送る。
数分後返信がくる。
その返信を見た瞬間、大輝は外に飛び出していた。
その返信内容は、
【霜月小雪は預かった。
byぬらりひょん】
中編に続く
予想以上に文字数が多くなったので
とりあえず前編です!!
後半は2月28日のどこかで投稿します!!