第五章 第三話 エレノラ邸
郊外の少し大きめの一軒家。
ここには、生活の跡があった。
一階のリビングに、大型の受像機とテーブルがあり、その気になればすぐに食事ができそうだった。
「こ・・・これって・・・」
テーブルに突っ伏して、コップに注がれたオレンジジュースをストローですする黒猫の写真・・・
「ノワールさんでしょう。かつて彼女は、獣人の姿と猫の姿の両方をもっていました」
「ん?「大怪獣ホング・コング」?」」
「「新世紀ゴバンゲリオン」?」
「「農戦士コンバイン」?」
アニメや特撮らしいディスクばかりである。
「ん?」
目のつくところに、宝珠がある。
ルミナリアが触れると、立体映像が浮かび上がった。
それは、エルフの女性魔導師の姿である。
『この記録を見る人が、いるということは、文明は滅んでいることでしょう。しかし、後世に伝えるべきことがあると感じて、私は記録を残します。
私は、大帝国の魔女エレノラ。
戦いに臨む際、未来への伝承者が生き残りました。
秘密図書館の管理人ノワール。
調査隠密ガチョウおばさん。
報道官滝川クリスタルの三人です。』
「エレノラ・・・!」
フローラが息を呑む。
『超魔王を作った科学導師ハルカ・オガタ・・・
彼女は、天才錬金術師ハイペリオンの弟子で、私もかつて彼に師事していました。
彼女は、『自分は、世のため人のために研究をするのだ。』常々そう述べて、私的な、特に本能に直結する欲求を嫌った人でした。つまりは、「超堅物」で「こいつは聖職者か?」といわれる性格をしていた訳です。ある日、彼女は、万能細胞を越える「超万能細胞」の合成に成功しました。医療の限界を知っているでしょうか?基本、一部の臓器が破損したならば、新鮮な臓器を移植するしかありません。代替の策としては、人工臓器を移植する方法もありますが・・・』
「旦那様が言っておられました。「地球」には「心臓」「腎臓」「肝臓」を機械でその代わりをする人工臓器があると・・・これくらいの文明ならば、それくらいできても不自然ではありません。」
グレイが言った。
『『万能細胞』『超万能細胞』とは、必要とされた臓器の『情報』を書き込むことで、最初から自分の新しい『部品』を作り、欠損した臓器や手足を移植できる、医者にとっては「神の技術」といっても過言ではありませんでした。』
「問題は、技術うんぬんじゃないわ・・・それを巡って、人がどう動くかよ。」
ルミナリアの言葉に、グレイとファルフがうなづく。
『ハルカ博士に思いを寄せる助手が、彼女に想いを打ち明けたことが、その全ての始まりでした。』