第四章 国境地帯の異変
執務中のノワール二世。
膨大な書類に目を通し、印を押す。
印のデザインは、「デフォルメされた人猫の司書女王」。ノワール二世は、密かにこのデザインを、気に入っていた。
「次は、評議委員会で可決された、今年の税制案ですね。」
印を押そうとしたとき、ダルタニアンが執務室に飛び込んできた。
「へ・・・陛下・・・!こ・・・国境地帯に異変が・・・!」
「『国境地帯』・・・」
その言葉に、ノワール二世は、不吉な予感を感じる。
「『神聖アトランティア法国』の封印が、解けかかっています。」
ありえない・・・
が、理論上の上で、「抜け穴」はなかったか・・・
「なぜ、気付かなかった・・・誰も・・・!」
「あっ!」
ダルタニアンも、そのことに気付いたようだ。
「酸を中和するには、アルカリ溶液を加えればよいのです。あの氷壁が「酸」であるなら・・・」
「誰かが、「アルカリ溶液」をかけたと?」
「そうです。」
ノワール二世は、悠久の図書館を手に取った。
「あの氷壁は、創造神王の氷竜と破壊神王の闇氷竜の力を借りて使用された術です・・・ならば、創造神王の聖鳳凰と破壊神王の闇鳳凰の力をもってすれば、「中和」できる・・・!」
うかつだった!
なぜ、誰も気付かなかった!
「しかし・・・誰があの「封」を・・・解いたところで、誰も得をする人はいないのに!」
「いますよ・・・「我々」ではなく「連合軍」の敵です。」