EX1 英雄と妻と王
王都トラルティアの酒場・・・
王宮の側にあるため、騎士や王宮関連の科学導師、一般庶民なども利用する酒場である。
ここで、一通りの仕事を終えたライテスが、妻エリーと飲んでいた。
「よかったじゃない。婿が見つかって。」
「ああ。あのころ好きだったWEB小説を語ったのは、間違いだったと思っていた。私はあの子に、善悪を判断できる子に・・・そしてそれだけが全てではないことを理解して欲しかったのだが・・・おかげで、自分の「恋心」を壊して私のクローンになりさがってしまうとはな・・・父親として情けない。」
「まあ、天才ってのは、往々にしてそういうものよ。」
「言うようになった。深窓の「お姫様」だった君が。」
「右も左もわからない「異世界」で助けてくれたのはあなたよ。」
しみじみと呑む。
「おや・・・ライテスにエリーか。」
酒場に入ってきたのは、ユーフェルだった。
「陛下・・・」
「すまないと思っている。」
「何がです?」
友の突然の謝罪に、少し驚くライテス。
「私が君を「遊学」と称して世界中引っ張りまわしたことで、君は意に沿わない「英雄」になってしまった。」
「何を言っておられます?そうでなくとも私は、世界中旅をしたでしょう。つまり、運命ですよ。」
ライテスの脳裏には、ユーフェルと共に世界を廻った記憶が蘇る。
「そうだな・・・君は、あの田舎の「邪馬台国」さえ、近代国家に変えてしまった。」
「そして、我々は、娘たちが超魔王を倒す手伝いをし、今の世界を贈ることが使命です。」
「ところで・・・君の娘たちは、「変わり」初めているそうだな。」
「はい。ノワール二世陛下のところから、王太子キティ二世が「覚醒」したと言ってきました。」
「あの可愛らしい姫がか。」
「王太子補佐官との睦事の、最中のことだったようです。」
「フフ・・・血は争えないわね。」
「ルミナリアとユイも「覚醒」したようです。」
「おや・・・もうこんな時間だ。」
ライテスが時計を見る。
「私もそろそろ帰らねば。」
「「「また明日・・・」」」
ライテスの「親」としての「苦悩」は、以外にあるものです。