第二章 第一話 勇者集結
「遅いわよルミィ!」
宿のロビーで、フローラが仁王立ちしていた。
なにやら怖ろしい「気」を放っている。
「許婚におんぶしてもらって、うらやましいぞ!」
「フローラ。ひがまない。」
ロビーのソファに座っていた少女が、声をかける。
ルーシャートの聖魔剣士ヴェイスト・エリス・イスカンダリアだ。
「ふみゅううう・・・」
エリスのひざの上で、従者の人犬の少年ヤンが、頭を撫でられ、気持ち良さそうにしている。一応、これでも「黒魔法」の使い手だ。
「こんなかわいいペットが、いるからこんなこと言うのよ!」
「ぼく、ペットじゃありません!エリス様の従者です!」
がうううと唸って、反論する。
完全にペットである。
「ま・・・お祝いといこうかね。」
そう言ったのは、人間くさいエルフ亜種の王子リーク・エルフィーラだ。
氷の魔術の達人だ。
「そうですね。特に、ライテス家はなったばかりの家です。めでたいですね。」
リークの許婚で、エルフィーラの公爵令嬢のミラ。炎の魔術の達人である。
「おや。みんな来ていたのか。」
フランクに声をかけるのは、この国の王子シャルス・ラムンセンである。
「このKY王子め!」
「議題だが・・・」
シャルスが切り出す。
「ライテス卿の報告だと、「レイスト・フローラ=光の勇者」「ルミナリア=風の勇者」「ヴェイスト・エリス=闇の勇者」「リーク=水の勇者」「ミラ=炎の勇者」「シャルス=地の勇者」となるらしい。」
「つまりは、「勇者」を隠して、代々共に戦っていたということか。」
リークが言う。
「でも、この武器・・・そんな感じはしないねえ・・・ん?」
リークの「吹雪の弓」が、剣に変わる。
「なるほどね・・・代々の氷術士は、弓士だったけど僕は剣士だ。これが「水の勇者」ってことか。」
ミラの「炎のレイピア」も剣に変わる。
「なるほど。わたくしも剣士ですからね。」
ルミナリアは、ファルフの背から降りる。
「これからどうする?」
「定番では、キティルハルムの王立図書館か、ドラゴンシティだね。」
「調べ物・・・」
そこへ、翼が生えた女性が現れた。
「ま・・・ガチョウおばさん!」
「いいところをつきますね。ドラゴンシティに行きましょう。」