第二章 昔、聞いた物語
私は、ルミナリア・ライテス。
子供の頃に、錬金術や科学書を読みつくしてしまった私は、父に言った。
「父上。「地球」のお話して。」
「ああ。いいよ。」
「「地球」の「ファンタジー小説」!」
あの頃は、知識を詰め込むのに夢中だった。
それは、「地球」で、人生を失敗し続けたため挫折し、事故で死んだ後、別の世界でやりなおす人の話・・・
地方領主の子に転生した彼は、魔法の天才となり、若くして英雄となる。
初恋の人、あこがれだった師、姉のような剣士・・・三人の妻を得た彼は、ひとところに落ち着き、竜神の配下として近い将来に現れる邪神に備えるため戦い続け・・・ひと時の平和を得る・・・
やがて、私は、主人公の腹違いの妹と、主人公の息子の恋愛劇に泣いた・・・
「誰も被害者だよ。でも・・・」
父は、悲しそうな顔をした。
いつも人を喰ったような父が・・・
「誰も、加害者なんだ。」
そして、父は言う。
「お前は、これを「全て許さない」と言う酷い奴と戦わなければならない。この父も共に戦うよ。いいかい。お前は、いろんな種族の血が流れている。それも「人間」だよ。でも、「敵」は「人間」に酷い目にあわされて「人間」をやめてしまった奴だ。戦いで負けて退くことがあっても、「負けて」はならない。」
このとき、父は既に私に「勇者」として生きよと暗に言ったのだろう。
奇しくも、その主人公の妹は、私の妹と同じ立ち位置にいるのかもしれない。
「起きたか。」
私は、ファルフにおぶわれていた。
「どんな夢を見ていた?」
「昔、父上に話してもらった小説の話・・・悲しかった・・・」
「義父上や、義母上に甘えてもいいんだぞ。無理ならオレがいる。明らかにオレはお前より弱いが、それでもお前の心を支えるだけの力はあるつもりだ。」
「私・・・勇者でいいのかな?」
「では、どうしたい?」
「今は・・・みんなの笑顔を守りたい・・・」
「そうか。なら、それが「勇者の資格」だ。」