第一章 第三話 ユイ・アイン・ライテス
ユイ・アイン・ライテス。
彼女のことを「真の科学導師」「大賢者」と呼ぶ者は多い。
十代に手が届かないうちに、トラルティール総合学院を卒業し、現在は王女ミリエーナの師範代行を勤めている。
また、空気から金剛石を作る行者、
大爆発を起こす者としても知られる。
「どうしたの?ユイ。」
「ちょっと、考え事をしていました。」
ミリエーナ姫・・・通称エナは、怪訝そうにユイを見た。
「偉大な両親と、姉上がいると苦労するのね。」
フフッと笑う。
「姫様こそ、人のことは言えないではありませんか。」
「そう?でも、私は最初の「統一トラルティール」の女王よ。」
「まあ、家督は姉上に押し付けましたが。」
「それって・・・」
「姉上は、一言で言えば「クソ真面目」です。それでいて人に弱いところを見せるのは恥とする人ですからね。いつかストレスで倒れそうです。」
エナの額に汗が流れる。
「まあ、「伴侶」が見つかったので、とりあえずは安泰でしょう。」
「でも・・・あなた・・・人のことは言えないのでなくて?」
ブッ!
ユイは、口に含んだ紅茶を噴いた。
「私に近づくのは、大抵科学導師です。それも仕事関係で。」
「大変ね。」
「この性格のせいもあるでしょう。しかし私は、まだ「子供」ですから。」
困った話だ。
「父上の話だと、私は精神だけ大人になってしまった状態のようです。」
「どうして?」
「わかりません。しかし、でなければ危機に陥った姉上を助けに行くなど到底できません。贅沢な悩みでしょうか?」
「それこそわからないわ。でも、いつかわかるときがくるわ。」