第一章 第一話 勇者とは・・・
ラムンセンの宿では、ファルフが「ライテス自伝」という本を読んでいた。
「よくある話だ。本人の思惑とは別の方向で「伝説」が作られるというのは。」
「あんた・・・叔父様のファン?」
「まあそうだな。ルミィに関わって、それで興味を持ったというところか。」
俗説では、ライテスの偉業が美化されて伝わっている。
「例えば、結婚前に義父上が義母上を救出に出たとき、いかにも騎士が姫を助けに行くというシチュエーションで語られていて、義母上が無抵抗のお姫様のように言われている。」
「違うの?」
「この書によると、義母上は、主犯に対して「お宝」を破壊したと書かれている。」
うわあ・・・フローラは絶句する。
「それにだ。結婚当初、お二人は新婚旅行の後、自然に「溜まる」のを待ってから子作りを始めるつもりだったらしい。」
「真面目ね・・・」
「と、いうよりお二人は元々仲が良かったが、どちらかと言うと「師と弟子」「異世界における先輩と後輩」という関係だったらしい。」
「よく子作りができたわね・・・」
「お二人は、男女関係なく「友」となれる素質をもっておられるようだ。夫婦関係もその延長のようだ。」
ファルフは、本を閉じる。
「人の心配ではなく、自分の心配をしたらどうだ?許婚もおらず、焦っているのだろう?」
「うるさいな!」
「家を存続させるより、自分の幸福を優先させたほうがいい。」
「!!」
「どちらかと言えば、そのほうが早い。」
ファルフは、心理分析に長けているようだ。
「絶食系って、人の心理を読むのはうまいわね!」
「伊達に肉食系に絡まれ続けた訳じゃない。あいつらは、こちらの「嗜好」を無視して自分の嗜好を押し付ける。」
ふう・・・とため息をついて、フローラ。
「勇者ってなんだろ・・・」
「誰も成せない偉業をなしたあるいは、なせる者。類まれな勇気を持つ者。というのが定説だ。まあオレは、恋愛事に興味がないからこそ、ルミィを選んだ。」
「ノロケですかい。」
絶食系の恋愛って・・・
「同期には、色恋ごとに現を抜かすバカが多すぎる。そのような獣理論にはついていけん。」
「ルミィもそういってるわ。」
「奇遇だ。そうでなくてはな。」