第六章 第三話 大賢者
パキイイイイイイイイイイイイインッ!
ルミナリアが、手にした剣は折れていた。
「やはりな。あれだけ強力な術を使ったのだ。剣が耐えられるはずもあるまい。」
「くッ!」
形勢逆転か・・・
「さあ・・・これで、「風の勇者」の伝説は終わりだ!」
ウォルストが、剣を振り降ろしたとき、無数の金剛石が盾となった。
こんなことができるのは、一人しかいない。
「ウォルスト・ダイアレート・・・「ライテスの娘」は、もう一人いますよ。」
なんと!空中にユイが、静止していた。
頭からは角を、
背からは鳥のような翼を、
腰からは、毛皮に覆われた竜の尾を生やして。
「姉さまはいつもそう。人の努力が見えない人が大嫌い。忠義を勝手に「反抗」に解釈する人が大嫌い。父上そっくり。」
「妹のクセして生意気言ってもう!」
自然と笑みがこぼれる。
「やっと笑った。」
そう言うユイ自身も微笑んでいる。
「コレ、なんとなくできた。自分の遺伝子を理想の形に組みかえる。それと、助っ人呼んできた。」
ユイの示す方向を見ると、フローラと一人の人狼らしい白銀騎士が走ってきていた。
「覚悟してください。」
ユイは、ウォルストをキッと睨み、構える。
「金剛石吹雪!」
「バカめ!一度見たものを・・・何ッ!」
ウォルストは、金剛石を次々と灰にしていくが、次第に周囲の空気が爆発していくことに気付いた。
「ま・・・まさか・・・」
「金剛石吹雪は、フェイクです。あなたの周囲の水素原子を急速に収束しました。」
「さ・・・三重水素・・・トリチウムか!?」
「そんな中に、炎なんか叩き込めば、どうなるかお分かりですよね?」