第五章 第二話 凍結粉砕
ティスは、特殊な実験室に閉じ込められ、脱出できないでいた。
「なぜ、貴様がここに閉じ込められたかわかるか?」
ファルスは、部屋の窓の前に立っていた。
「わかりません・・・」
「あーあ・・・これだ・・・」
ファルスは、少し何かを考える。
「あー・・・じゃあ、「私の恋心」はウソでしたと言え。そうすれば、「資金問題」の件も全部チャラにしてやる。」
ファルスの声は、極寒地獄のごとく冷たかった。
「嫌です!」
その声と同時に、室温が下がる。
「てめえ・・・ケンカ売ってんのか?」
「そ・・・そんな・・・私は、博士のことをこんなに・・・」
「「想って」んのが、むかつくんだよ!」
更に、室温が下がる。
「爺さんのことを「そういう」関係だと思っていたようだが、オレは仕事以外では、貴様の考えるような話題は、受付ねえんだ。研究室の女共が、オレとうまくいっていたのは、そこんとこ理解してくれていたからだ。」
「じゃあ・・・」
「そういうことだ。貴様に「好き」だと言われる度に、オレがどんだけストレスをためこんでいたかわかんねえだろ?いや・・・ストレスをためこんでると気付いても、原因までは気付かなかったろうな。」
「どうすればいいんですか。」
「言ったろ?「なかったこと」にしろって。」
「できません!」
「てめえ・・・!」
室温が、一挙さがる。
「世間的には知られておらんがの。かつてワシも若い頃、お前さんのような女に妻と腹の中の子をころされたのじゃ。ファルスの気持ちはわかるぞい。」
室温は、「絶対零度」に下がる。
「じゃあ、お別れだ!「撤回」しなかった貴様が悪い!」
一瞬だった。
部屋は、空気すらも凍りつき、ティスはただの氷像と化した。
そしてそのまま、塵と化した。
「んでもって、オレと爺さんはハルカ博士にやっかいになることに決めた。どういうわけか、助手どもも一緒に来たが・・・」