第四章 第四話 軌道エレベーター計画の裏
「あれは、おめえたちの言う、「古代文明」の時代・・・俺は、一人の錬金術師の爺さんに出会った。」
「よお!アンタが、高名なハイペリオン師か?」
「今じゃ、ただのおいぼれじゃよ。若い頃に妻と腹の中の子を殺されて以来、何もできんようになってしもうた。「エネルギー工学」で名を売っていたのは、昔のことじゃよ。今は、道楽で研究をして小遣いを稼いでおる。」
ファルスは、このハイペリオンという錬金術師の心の中に絶望を感じた。
何か・・・朽ち果てるまで生きている・・・それだけのような・・・
「俺の研究に一口乗ってみねえか?」
「ほう・・・お主の研究か?」
ファルスは、ハイペリオンに軌道エレベーター計画の詳細を説明した。
「ほほお・・・それなら、昨今の魔力不足は解消し、人類はもっと豊かになれるのう・・・しかし、「宇宙空間」で、太陽光を魔力に変換するシステムはどうするのじゃ?」
「そこなんだよ。俺の技術じゃ、そこんとこが無理だ。」
「ほお・・・それでワシの力が欲しいと?」
「さすが、爺さん!話がわかるぜ!」
そこからが、忙しくなった。
「ティス・・・おめえ・・・有給が溜まってるだろ?一週間ほど休め。」
「えっ!?」
「肉体的にはともかく、ストレスで死んじまうよ!」
「は・・・はい・・・」
助手のティスに、有給を命じるファルス。
「危ないのう・・・あやつは・・・」
「どういうことだ爺さん・・・」
「ありゃ、お主に惚れておる。」
「判ってるよ。」
「お主は、一見ただの堅物のようじゃが、違うな。」
「ああ。女がだめなんじゃなくて、恋愛がだめなんだ。人といると疲れる。そんな奴が人を好きになれるか?」
「そうじゃのう・・・」
「だからあいつには、「俺の気遣い」を学んで欲しいんだが・・・」
「ある程度のところで解雇するべきじゃな。」
「爺さん・・・」
「昔、ワシに横恋慕した女がおってのう・・・」
「・・・・・・」
ファルスは悟った。ハイペリオンに何があったかを・・・
「せめて「学ぶ」ことをするそぶりがなければ・・・」
「わかった。」
やがて、ファルスの研究室では、女性科学導師や錬金術師が噂をしていた。
「ねえ・・・あの子・・・いい加減諦めないのかしら・・・」
「そうね・・・リサだって、アプローチをやめたら博士は優しくなったって言ってたよ。」
「ほんと?エナも、「そういう態度や言葉」を出さなくなったら、自分のオタク話を聞いてくれるようになったって。」
ファルスは、基本的に「同族」には普通の態度をとるのである。
しかし・・・
「博士は、ハイペリオン師のほうがいいんだ・・・」
ティスは、見当違いの嫉妬をしていた。
「ゲッ!そっち!?」