第四章 第三話 機巧の大魔王
そこにゴールドミスリルの鎧の上に、白衣を着た風変わりな騎士が、黄金色のバットを手に佇んでいた。
「よお!マッドサイエンティスト!」
人のことは言えそうもない、科学導師が声をかける。
「その言葉をそっくり返そう。」
「ライテスだな?」
「そうだ。あなたのことは、キティルハルムのミルフィ長官から聞いている。「ファルス・エルラトス博士」だな?」
「ほほお・・・知っていたか。今は『機巧の大魔王』ファルス・エルアレートだ。」
「よい星空だ。」
「ああ。こんな日は、あのクソ女のことを思い出すぜ。」
ファルスは、忌々しげにしているものの、どこか穏やかな顔をしている。
「『軌道エレベーター』って知ってるか?」
「この大地と天空の『宇宙空間』を繋ぐ、星空の海への桟橋のことだろ。太陽光を莫大な魔力へと換えるパイプでもある。」
「さすが転生者。よく知ってるぜ。その研究をよ・・・一人の女にダメにされた。」
「大方、あなたが研究一筋で、自分に目を向けなかったから腹いせにやったのだろう?」
「向こうは、そう思っていたがな?オレは奴に休暇も給料も弾んでやったぜ。激務だったからな。俺は、プライベートでは、人といると神経が磨り減るんだ。だから、奴にもって思ったんだが・・・」
「「残念・・・「同族」ではありませんでした。」か?」
「そういうことだ。休暇を与えれば、どこかへ行こうと言う・・・金があれば余計なものを買って来る・・・休みに疲れることをしてどうする?ガキじゃねえよ。金を人のために使うくらいなら、そんなムダはせずにテメエのために使えってんだ。」
「言ったか?」
「ああ。逆ギレされた。」
「往々にして、絶食系って奴は「普通」じゃない。だが、彼女は認めないどころか、理解やあなたを学習すらしなかったと。」
「そうだ。」
ライテスは、小振りの瓶を取り出し、ファルスに投げる。
「酒か?」
「ああ。キティルハルムの蔵元がかなり前につくった奴だ。うまいまずいは分かれるが、おもしろい酒だ。」
「いただこうか。」
栓を開け、煽る。
「な・・・なんだこれは?」
口の中が、電撃に襲われた。
「スパークリングワインという。地球では、炭酸のワインのことを言ったが、本物の電撃を入れるとは恐れ入った。「ミケランジェロ」という一族は、オヤジギャグで生きているらしい。」
「ふはは!さすが、あの黒猫の子供たちだ!おもしれえ!」
「まさか、大魔王に「風流」をわかる奴がいるとはな。」
「おめえには、話してもいいか。俺が、「あの女」を殺したいきさつを・・・」
ファルスは、星をながめた。