第三章 第四話 黒い大型乗合自動車
邪馬台国国境地帯。
ここに、各国の要人が集まっていた。
国外の来賓用に、大型乗合自動車があるのはいい。
「なんで、外装の塗料が「黒」なのよ!?誰の趣味!?」
車体が全て「漆」で塗装されている。
フローラが、絶叫した。
「申し訳ありません・・・私の父です・・・」
そこにいたのは、品の良さそうな武家の貴公子だった。尻尾が垂れ下がっている。
「空軍大佐トヨトミ・ヒデヨリです。」
「トラルティール王国白銀騎士レイスト・フローラ・ティアムルです。こっちが、同じくルミナリア・ライテスです。」
「うーん・・・コレ・・・「漆」ですね・・・単価は高いくせに、耐久性に優れている・・・」
ルミナリアは、外装をなめるように見ている。
「ウチの父上ならやりそう・・・黒い大型乗合自動車とか言って・・・」
フローラは、内心「げっ」と思う。
「何せ、錬金術の材料や機械の部品の宝石は、わざわざキティルハルムの輸入品を使っているし、両親は、貴金属の装飾に興味はないですね。」
冷淡にいうルミナリア。
キティルハルム製の宝石は、ほとんど原石のままの加工で、球状あるいはレンズ状のものが多い。そして安価である。地球の市場価格では個人端末電算機の部品並みの価格であろう。
「父は、成金趣味と陰口を叩かれています・・・」
ヒデヨリは、冷や汗を拭う。
「ノブナガ将軍が、「ライテス卿は、キティルハルム人と仲がよい。」と仰っていたのは、そういうことでしたか。」
「フローラ・・・この人に手を出しちゃだめよ。」
「なんで?」
「許婚がいるから。」