第二章 第一話 入り込んだ「ネズミ」
さくっ!
ライテスが投げた、クナイが壁に刺さった。
「どこのネズミかと思えば、本当に「ネズミ」か。聞きしに勝る「変態」だな。」
休日の研究部屋に、「変な気配」を感じ、ライテスは即座に反応した。
「いや・・・君に逢いたくてね・・・こっちに「味方」してくれない?」
「変態」と呼ばれたことに少し腹を立てつつも、実験用マウス一号は言った。
「断る。趣味・嗜好はそっちよりだが、そこまで外道じゃないのでね。強いて言えば、「そちらの人間を増やさないための伝道者」を気取っているつもりだ。」
ふうん・・と実験用マウス一号は、ライテスを見る。
「それ・・・偽善者だよ。」
「「偽悪者」の仮面をかぶった「偽善者」というのも、シャレがきいていていいだろう。」
「さんざん趣味の悪い生き物をつくっておいてよく言うよ。」
「娘にも言われているがな。」
ところで・・・と前置きして尋ねる。
「どうやって現代まで生きてきた?キティルハルムの科学導師や軍事専門家が頭をひねっていたぞ。」
「検討はついているはずだよ。」
「やはり、「超万能細胞」と「原本遺伝情報」か。地球では不可能なことをよくもやってくれる。」
「そりゃどうも。」
「複製ではどうしても、情報に欠如が生じる。だから、定期的に「記録更新」して「原本情報」を常に新しいものを作成しておき、肉体年齢をいじったうえで「超万能細胞」にコピーして体を取り替えていたわけか。フフン・・・地球のSFでは古典的な悪役の「不老不死」の手口だ。」
「できなかったの?」
「できてたまるか。その一歩手前が、貴様の「ご主人様」に良く似た末路だ。当人は隠居して俗世間から姿を消したがな。」
「いつの時代も「悪いように誤解」するのが趣味の輩が多いね。いくら裏がなくてそう言っても信じない。」
「それは同感だ。だがコレばかりは理解せずとも「認識」しておけ。「わかっていても変えようとするものがいる。」ということを。・・・そして、私は「それでも守りたい世界がある。」と。」
「ふうん・・・かつて、エレノラが君みたいなことを言っていたね。スカウトは無駄だったが、収穫はあった。」
そう言うと、実験用マウス一号は、転移する。
「まるで、メフィスト・フェレスのような奴だ。」
ライテスは呟いた。