第一章 第三話 アルミニア
ボーキサイトの鉱山の町アルミニア。
ここは、新素材アルミニウムをライテス卿の発案で探査したところ発見されたことから発展した町である。
町は、ゴールドラッシュの沸いていた。
近郊には、精錬のための錬金術工場が多く軒を連ねており、地域の雇用にも一役買っていた。
「偉大ねぇ・・・叔父様は・・・一つの町を立ち上げて、「失業者」を軒並み「潰し」ちゃうなんて・・・」
「これだからイヤなのよ。」
「なんで?」
「家では、クソ親父なのに、人様の役に立っているのが・・・」
統合当初は、旧トラルティア側の国庫消費が懸念されていたのが、嘘のようである。
「これだけ発展しているのなら、「ウズドガルド大公家」もおとなしくしてるかな?」
「あくまで、「大公家」よ。「旧王家」はどうかしら。」
先祖を辿れば、ルミナリアはどちらも「身内」である。
「さて・・・当座の問題は、父上の部下「考古副長官」の発見した「風の神殿」・・・」
トラルティール考古庁の長官は、ライテスである。
多忙であるため、部下が代理を勤めている。
「叔父様は、「万能」であっても、「手」は廻らないのね・・・」
「父上は、化け物じみていても「人間」よ。クラーケンじゃあるまいし。」
万能の天才とは、どこでもこんな扱いである。
「レオナルド・ダビンチってのは、こんな風に言われてたのかな・・・」
「誰それ。」
「旦那様からお聞きしました。「地球」で、錬金術師と科学導師が力をつけ、技術を発展させ始める頃、「芸術家」「神学者」「錬金術師」「科学導師」としても高い能力を持ち、「万能の天才」と称された人物です。数百年先の「飛行機」技術の出現より先に「航空理論」を確立したという伝説があります。」
グレイが、ルミナリアの説明を補足する。
「それまでは、どんな発展具合だったの?」
「ギリシャやエジプト、ローマといった国が、興した文明だかそれ以前の文明を受け継いだかで、かなり錬金術や科学が発展していたみたい。けど、キリスト教の影響で、封印されたり禁止されたりして数百年・・・ルネッサンスという革命が起きて、錬金術や科学が復活して、長足の発展を遂げたって。」
「それで、叔父様は、それを封殺しようとしたアトランティアを打倒したノワール一世を評価してるのね・・・」
「そういうこと。彼女がいなければ、宗教戦争は過熱して、「人間」のいくつかの種族は滅亡していたことは間違いないから。」
ルミナリアは、宗教というものに懐疑的だ。
父親の教育に影響されているのだろう。
宗教が、発展を妨げたり、思想を捻じ曲げたり・・・
それを聞くたび、キティルハルムの法を絶対視したくなる。