第三章 第四話 動き始める闇
その研究室は、施設の奥にあった。
「さて・・・」
実験用マウス一号は、カプセルの中に横たわる。
「この作業も、どんだけ繰り返したことか。」
言うと、カプセルの「フタ」が閉まる。
カプセルの横には、もう一つのカプセルがある。
魔法力電算機が起動して、空のカプセルに煙のようなものが充満していく。
やがて、中に実験用マウス一号と寸分変わらないネズミが出現する。
ぱしゅっ・・・
「ネズミ」の側のカプセルが開き、「ネズミ」は上体を起す。
「うーん・・・今回の「複生体」も完璧だ。なにせ、「原本情報」から直接に超万能細胞に書き込んだ複生体だ。卵細胞ベースとは訳が違う。あれだと、劣化するからね。」
そう。
実験用マウス一号は、ライテスの予測どおり、原本情報から自分を「不老不死」へと変えていたのだ。
「でも、まあ・・・「人間」側には、ライテス君という「参謀」もいる。キティルハルムの猫さんたちも、いいかげん僕が「生きて」いることに気付いた頃だよね。」
彼は、その名の通り、ただのネズミではない。
主であるハルカ博士から、あらゆる強化措置を採られ、そのままでもエルフ並みの寿命を持っている。
また、「人間」並みの頭脳も・・・
「この古い身体も、八百年以上も生きたからね・・・限界だった。この零歳の身体は、「人間年齢」で十歳に相当するからね。ファルス博士に「ナニ」を見られた頃同様の力が出せるはずだ。」