第四章 第一話 宗教審問
キティルハルムに入国した途端、物々しい雰囲気に出くわした。
「なんですか?マスター。この国全体を覆う邪悪な「気」は。」
肩にとまったダニエルが、聞いてきた。
「キティルハルムの人猫は、ほとんどが「廃神主義者」だ。何せ、「神様」当人に塩をぶつけたヤツが記録に残っているほどにな。」
「では、マスター。神官か司祭でも入り込んでいたのが見つかったというのでしょうか?」
マリアが言う。
「そのようだ。」
「でも・・・やりすぎなんじゃ・・・」
エリーが、言ってきた。
「まあ・・・聖職者でも、「布教活動」さえせず、「遊学」・「観光」だけなら誰も咎めない。しかし、以前着た時に、知り合いになった「ミケランジェロ家」の陶芸家に聞いたところ、「神様の就活お断り」と言っていた。」
キティルハルム王都のコロッセウム・・・
そこでは、宗教審問が始まるところだった。
「それでは、宗教審問を始めるにゃ!あちしはエナ・ミケランジェロ。宗教審問官にゃ。」
司書の格好をした人猫である。
コロッセウムの中央には、武装した人猫の騎士が、被告と思われる神官を左右からがっちりと押さえている。
「わ・・・私が何をしたっていうんだ!?」
それに対して、観客席にいた人猫たちから、ブーイングが放たれた。
曰く、「人間」の裏切り者。
曰く、「無差別虐殺者」。
曰く、「人間」以下のけだもの。
その他もろもろである。
「さて・・・被告・神官レナートは、何の目的で入国したにゃ?」
「それは、神の教えを伝えに・・・」
「それは、「神様の就活」として禁じられているにゃ。神様のことが知りたいなら、「王立図書館」でいくらでも調べればいいにゃ。「神学」は、禁止されてないにゃ。」
「神は平等だ!」
「でも、建国期にその「神様」の使途にこの国は、あやうく滅ぼされそうになったにゃ。それ以来、キティルハルムの民は宗教そのものを「人間族」のみならず、「人間」全てを害する存在として認識しているにゃ。」
「し・・・しかし・・・!」
「ええいっ!問答無用!被告を「第一等宗教禁止法違反」で、「半ケツ」の刑に処するにゃ!」
はーんケツ!
はーんケツ!
はーんケツ!
すごい半ケツコールだ。
「な・・・なにすんの?」
「口で言っても判らないなぁ・・・」
僕は、紙に日本語で書き、エリーに渡す。
「な・・・何コレ!」
程なく、神官のズボンが降ろされる。
ごていねいに、「ケツ」の部分だけくりぬかれたデザインである。
「執行人!いでませい!」
現れたのは、日本刀に似た包丁のような刀剣をもった男である。
「執行!」
その審問官の声と同時に、執行人は、一閃する。
「ぎゃああああああっ!」
尻が・・・横一閃に斬られていた。
鮮ケツ・・・いや、鮮血がほとばしっていた。
「あ・・・あれ・・・大丈夫なの?」
「あの後、回復魔法で止血されるが、傷は残されるらしい。」
判決ならぬ半ケツです。