第八章 第二話 騎士団長の名を継ぐ者
「皮肉なものですわ。真に「悟り」に近い者が「闇」に堕ち、悟りに最も遠い者が唯の被害者になりさがる・・・」
「そういうもんだぜ・・・」
「思えば、転生者とはいえライテスの言動には、不可思議な点が多すぎました。もしかすると、彼の言う「童貞のまま齢を経ると魔法使いになる。」とは、「混沌の悟り」に目覚めると同義であったのかもしれません。」
ライザは、神波動を発現し、黄金竜鳥に変る。
「なぜだ?」
「彼らには、「恋愛できない」者と「恋愛を汚物のように拒否する」者の二通りに分かれるといいます。ことここに至って、その問題の解決と責任の全てを「神」に丸投げする時代は、もう終わっているのです。」
ライザは、剣を構えた。
「確かに、人と人のありかたに疑問を投げかけたあなた方は、正しいのでしょう。しかし、「神」に全てを押し付け、責任転嫁する思考は、もはや時代遅れです。皆が、判断する新しい時代が既に到来しています。」
「きついこと言うねぇ・・・」
「これでも、伊達に「親」は、やっていません。義弟に口酸っぱく言われました。「叱っても、子供は納得できずに不当なものを感じるときもある。」「言われ方が問題である。」とかね。」言うと、ライザの姿は掻き消えた。
次の瞬間、彼女はファルスの右腕の上にいた。
「!!!」
右拳が、粉みじんに砕け散る。
「究極奥義・ティアムレットバースト。本来は多対一の奥義です。・・・が、あなたは巨体なので、とりあえず右手を破壊させていただきました。」
「やるな・・・!」
「ライテスが言っていました。あなたと飲んだ酒は「美味かった」と。彼にそう言わせるとは・・・「善人すぎた」ために、悪に容易に染まってしまったのでしょう。」
ファルスは、左手で頭をかく。
「そうかもしれねぇな。これだけは「一人の母親」として覚えておくといいぜ!」
ファルスの左人差し指に、神波動が、集まっていく。
「子供に期待をかけすぎると、バカになるってなあ!」
それは、強力な神波動砲。
その閃光が、ライザのいた場所を焼くが、当人は、宙に舞っていた。
「竜牙雷撃拳!」
ライザの右拳が、ファルスの頭部を貫いた。
「親に子供が育てるだけではないのです。親もまた、子に育てられるんですよ・・・それを自覚しない親たちが、なんと多いことか・・・」