第七章 第十六話 「神」の過ち
「あれは、失敗だったね・・・」
ルカは、頭をかく。
「やっぱり、殺さなくてもいいから、「破戒僧」の一人や二人、「審問官」の前でおしおきでもしたらどうだい。」
「うーん・・・」
しかし、手をはたとたたく。
「それはそうと・・・天空の勇者のこと・・・総合導師に言ってなかったよね?」
「うん。でも、薄々気付いていたみたいだし、フローラたちを「締め上げた」のだってただの「確認」だったようだ。」
「けどいいのかな?」
「なにが?」
「惑星の統合王になるって話・・・」
「受けないよ。」
「へっ?」
「彼は、元々無欲だ。地位も名誉もいらない。所詮、神聖騎士の肩書きと収入があれば、それでいいのさ。研究も、趣味と善意でやっているだけ。」
ルカは、ぽかんとした表情になる。
「八人目の勇者の称号に、ふさわしいくらいだ。」
カイロスは、続ける。
「「連合軍総参謀」だって、他にできるやつがいないからやっているだけ。ま、彼は転生前はそれこそ無欲な「労働者」だったんだ。そんなやつに「出世欲」や「売名欲」を求めるのがおかしい。」
「まさか、その時が来ても、それを予測できるのは・・・」
「奥さんと娘二人だけだよ。」
そもそも・・・と繋ぐ。
「どこの世界もそうさ。そういう奴ほど疎まれる。けどね・・・「ライテス一族」は変えようとしている。だからかもね・・・一度娘を敵に近しい「愛を拒む者」とする危険を冒してまでああいう「教育」をした。」
むむ・・・とルカは唸る。
「「愛の神」である僕には、到底認められないな!」
「君だってわかるだろ?「混沌の悟り」の理論は。狙ったわけではないらしいけど。ま、おかげで、敵と正反対の「救世主」を生み出したわけだ。大体ね・・・「愛」に二面性があるのは当たり前だよ。教育上の「厳しさ」なんかは、そうだね・・・誤解され、「憎悪」となることもある。
いくら、対象の恋愛や結婚を認めるための試練を与えたって、引き離すためだけの茶番と誤解されることもある。子供に説いてみろ。「そんなもの捨ててやる!」になるさ。」
「・・・・・・」
ルカは黙る。
「見ろ。「愛の神」にだって答えは出せない。そういうものさ。全てに表と裏がある。認めない奴が「超魔王」と化す。わかっているだろ?「認めない」ことが「酷いこと」だって。たいした奴だあの男は・・・それを娘に叩き込んだとは・・・ルミナリアはその分、誰よりも優しくなる・・・」