第七章 第十二話 総合導師と闇の魔王
「フローラが私と戦いたがっていたが、なぜ貴様なのだ?」
「私とずいぶん因縁があるからな・・・ウォルスト。」
ライテスとウォルストが、剣を抜く。
「逢わないうちに、「覚醒」したようじゃないか。」
ライテスが言う。
「なるほど・・・そういうわけか・・・」
ウォルストは、合点がいった。
「あのままなら、勝てただろうがな。」
「そういう貴様こそ、「覚醒」したようだな。」
「「更に」な。言っていなかったか?娘が・・・「それ」を教えたのは「私」だと。」
ウォルストの脳裏に、嫌な予感が走る。
「「進化」だけだと思うな。しかし、貴様のような「できそこない」は、見ていて「ヘドロ」が出る。」
「反吐だろ・・・」
「言ってみたかっただけだ。」
こんな時でもかライテス・・・
「「地球」の「日本」は、「生きづらかった」。文明力はトップクラス、経済もトップクラス。だが、発展と共に、生活を維持するため朝から晩まで働き通しだ。遊んでいるヒマなどない。休日は、身体と心を休めて翌週に備える・・・運よく異性との出会いがあり結婚できたものは、二言目には「女をつくれ」だ。気が滅入る。そんなことをしているヒマなどあるか。そんなことを言っている連中にしても、妻子を食わせるためにあくせくしているじゃないか。たまに言い寄る女にしても私のために「差し入れ」を調達してくる。私が、時間を削って待っているにも関わらずだ。いいかげん「絶食系」にもなろうものだ。」
ため息をつく。
「そんな折、この世界に転生して、「学ぶこと」「身体を鍛えること」「研究すること」の楽しさを知った。弟子兼恋人もできた。するとどうだ。「学べば学ぶほど」「身につく」のに学ばない・・・「鍛えれば鍛えるほど」「強くなる」のに鍛えない・・・「地球」の「限界」の「科学」でさえ「魔法」で補完できる・・・種族的な限界は別だが。そんなこの世界の人々を見て思った。「なんともったいないことをするのか!」とな。余裕があるのに学ばない!遊ばない!おまけに貧困だ差別だ!そんな折、ユーフェル陛下と共にキティルハルムを始めとする国々を巡って、感じた。「こんな連中もいるのか!」とな。彼らと共に研究をして、貴様らを倒す算段をするうち、「地球」にあった素材をいくつか発見し、資源を開発し、偶然だが産業を興し、「貧困」を一つ潰してやった。愉快だった。「地球」では兵器だったものを救助用車両へと転用してみた。意外と使えた。だが、貴様は・・・貴様らはどうだ!こんな「なんでもできる」世界で何を成した!」
珍しくマジなライテスは、「空牙」の切っ先を向ける。
「だが、ライテスよ。エミアにも言ったが、誰もが貴様のようになりたいと願うものだ。そうでありたいと!ゆえに許されない!貴様という存在は!」