EX4 決戦前夜
「光の中で見えないものが~闇の中で浮かんで見える~」
夜空が見える展望室で、ルミナリアとファルフは、肩を寄せ合っていた。
人影が、そこに現れた。
「暗い歌が好きなのね・・・」
「ええ。」
レミナリアだった。
「趣味が会うのでな。ライテス卿に許可を戴き、許婚にして戴いた。」
「ふーん・・・風流な恋人だこと・・・」
「ありがとう。そう言ってくれる人は、なかなかいないわ。フローラにしても「こんなのがいいのか」ってね。」
ルミナリアは、微笑する。
「どうかしてるな私・・・少し前まで、こんな風に笑えなかった。「恋」をするのも、「感情」を持つのも悪いことだと思っていたから。」
「どうして・・・?」
「そうだろう。「自分の恋愛」で我がままを通せば、「誰か」が取り返しのつかない不幸になる。ルミィのとってそれは、「勇者」として「許しておけない悪」だったわけだ。」
「みんなのために、「自分の幸せ」を押し殺して生きてきたの?」
「そんな自覚はなかったけどね・・・「兄や家族のために」自分の幸せを押し殺してきた女の子が、ある時、その兄がそれを許そうとした時、反抗したって、物語を父上から聞いたとき、哀しくなってね・・・「こんなのは嫌だ」って思って・・・」
「事実・・・ルミナリアは、騎士学校時代モテたよ。何しろ「お姫様」だからな。言い寄る奴がいるたび、半殺しにしてたな・・・結果近寄れたのは、男女関わらず「そういう話題」を持ち出さない奴ばかりだった。例外がフローラだったが。」
ん?と、レミナリアが、考える。
「正反対じゃないの?」
「ま、従姉妹だからかな。オレにもそれくらいはわかる。」
「でも、フローラって、「男がいない」ってばっか。それを言うたび、「いいかげんにしろ!」ってね・・・」
「でもどうして、彼を?」
「妹よ。」
「あの「天才」?」
「あの子・・・妹のくせして、よく気のつく子で・・・戦いの時、「親友」と「彼」を呼んできてくれて助かった・・・」
「前から、君のことは気になっていた。「絶食系」で誰にも媚びない。同じ趣味の話題の話でウマがあう。「獣理論」でなく、「理性」で語り合える・・・そんな彼女を探していた。」
まさか・・・と続ける。
「いきなり、許婚にされるとは思わなかったが。おかげで、プロポーズする手間が省けてよかった。」
「私はどうなるかしら・・・」
「探せばいいわ・・・」
「いるかしら・・・」
「いなければ、女王陛下に探してもらう手もあるわ。だって、あなた「旧王家当主」じゃなくて「ウズドガルド大公家」の人間として登録されているから。」
「えっ?」
吃驚仰天である。
「トラルティール統合の際、旧王家は「抹消」されているわ。だから「国民」として「再登録」するには「ウズドガルド大公家」に組み込むしかないというわけ。」
どういうわけだろうかと思うのだが・・・
「「地球」に恩赦ってのがあるって父上が知ってたわ。作戦が決まったとき、陛下に恩赦の制度がトラルティールにないのか?って聞いたみたい。もともとあるらしいけど、その辺は父上知らなかったみたい。抜けてるのよ・・・そういうとこ・・・」
その様子を、ユイは影から見ていた。
「いいの?ユイちゃん。僕のこと言わなくて。」
ユイに声をかけたのは、ルイ・イナス。天才少年で、魔導師であり科学導師である。
ユイ以外で、「真の科学導師」である。
知り合った経緯は、彼がユイにほれ込み、「押しかけ弟子」となったのがきっかけである。
「いいの。姉さまはああだから。せいぜい気にさせておくわ。「この件」でストレスでおかしくなりかけたころ紹介するわ。」
「大丈夫かな・・・これでも僕・・・義父上から、末席とはいえ君の「許婚」の許可をもらってるんだけど・・・」
「気にしたら負けよ。」