第五章 第六話 虚無の大魔王
なにやら、すえた臭いのする空間・・・
生物のカプセルが並ぶ不気味な場所である。
そこに、マントをまとったエルフらしき人物が歩いてきた。
「私は、虚無の大魔王・・・エレシア・レナスレート・・・」
「エ・・・エレシア・・・エレシア・クレイン・・・!」
滝川クリスタルは、目を見開いた。
「誰ですか?」
グレイが尋ねた。
「正義の報道官と呼ばれたジャーナリストです。しかし、ハルカ博士の研究資金疑惑が世に蔓延したことを煽り立てたため、特に彼女の陣営のハイペリオン師とファルス博士の怒りを買い、捕縛されてしまった人です。」
「いやあ・・・あの時、「老師」がかんかんに怒ってねぇ・・・魔物を孕ませ「産む機械」にしちゃったのさ。」
ぴょこっと飛び出す、実験用マウス一号。
「実は、彼女ね・・・そのご先祖様がね、「老師」が駆け出しの頃、嫉妬に狂って「奥さん」とお腹の中の子供を殺しちゃったんだよね。ご先祖様当人は、「老師」が殺したけど、一族もことは許してあげたんだって。けど、子孫であるこの人がエライことしちゃったせいでさあ・・・」
「ま・・・まさか・・・」
滝川クリスタルが目を剥いた。
「「死ぬ」度にね・・・「生き返らせ」てあげたんだ。僕の「不死の法」でね。でも、さすがに「心」だけはどうしようもなかったみたい。それでも「産む機械」をやってたら、「壊れちゃった」みたい。ま、これだけ長い期間やってたら、そうなるよねぇ・・・人並み外れた根性もってても無理みたい。」
すると、滝川クリスタルはルーンブレードらしき筒を取り出す。
「やる気だね。僕は仕事があるから戻るよ。」
言うと、実験用マウス一号は姿を消す。
「ここは、私に任せてください。せめて、彼女を「解放」しなければ!」