第五章 第五話 エレノラの遺産
『つまり、ハルカ博士は、このときより全てのものを無価値・・・いえ、破壊対象とみなしました。難しいですね・・・恋愛・結婚を自分にとって「幸福」として求める者がいれば、それを切り捨て、全てのために尽くすことが「至高」であるとする者もいます。さて・・・ハルカ博士は私と敵として再会した際、ありえないほどの強さとなっていました。その原因は恐らく・・・』
「なんてことだ・・・」
「父上が、あの小説を語ってくれたのは、そういう意味だったのね・・・「たった一つを手に入れるため、全てを捨てるな。」とは・・・」
「多分・・・ライテス卿は、わかってた。なぜ超魔王が古代文明を滅ぼしたか・・・」
エリスが呟く。
「で・・・何かわかったか?」
リークが尋ねる。
「完全には・・・けど、糸口はつかめた。」
大通りを進み、城内に入る。
そこには、実験用マウス一号がいた。
「おかえり。ルミナリア・ライテス君にレイスト・ローラ・ティアムル君。ヴェイスト・エリス・イスカンダリア君。そして滝川クリスタル君。」
「何を言ってるのよ!」
フローラが怒鳴った。
「おや・・・君も知っていると思ったけどね・・・現在のティアムル家とイスカンダリア家のご先祖様の一人である大魔導師エリティアは、大帝アルスの末裔なんだよ。だから「おかえり」なんだ。ここから先は、大魔王たちが通せんぼしているよ。一人が抑えて全員が先へ行ってもいいし、全員で倒してから進んでもいい。じゃあ、待ってるよ。」
言うだけ言うと、実験用マウス一号は、その場から消えた。