第二章 第三話 恐れていたこと
私は、エアリアル・トラルティア。
今年で、十歳になった。
兄ユーフェル・トラルティアは、病床の父に代わって政務に励んでいる。
許婚のライテス・ヴァルシュタインは、めでたく黄金騎士の叙勲を受け、バリバリと働いている。
だが、なぜだろう。
悪い予感がする。
「邪悪な気が、パスキール島に!?」
「間違いありません。義姉レイスト・エルザ・ティアムルが兄クラシスとともに向かいました。」
ティアムル家当主レイスト・エルザ・ティアムル・・・
いや、『レイスト』の名を次期当主が親より受けることは、この世界に危機が迫っていることに他ならない。
なぜか、邪悪な輩は、世界の中央パスキール島に居を築くらしい。
「なぜ、ここに集まるのかしら?」
「魔法的な要因、科学的な要因があるのかも知れません。」
ライテスは、私たちが口外せずにいたにも拘らず、自分からカミングアウトした訳でなしに、「転生人」であるということが、ばれてしまっていた。
そのためか、とう様が新設した「科学省」の特設顧問を兼任させられている。
なんでも、物理的な爆薬や銃器、機械類がここには存在しない。
エリティアという人が、魔法と爆薬で大爆発を起こしたというが、この爆薬の材料も魔法物質である。
自然物質で爆発を引き起こすという、発想自体がなかったのだ。
それと、ラムンセンとの合同調査で、「神々の宇宙戦艦」のデータ解析もやってのけた。
なんと!巨人の姿に変形して攻城兵器になるとか。
本人は「マク○スかよ!」なんて言ってた。
それと、ライテスは、ラムンセンの腕利きの鍛冶師(情報屋も兼任している)に依頼して、オリハルコンの刀を打ってもらった。銘は空牙。トラルティア騎士団流に最も相性がいい。
ライテスが、一閃しただけで衝撃波がうまれたくらいだ。
ウズドガルドに、もう一人の転生人が現れたとの報が入った。
宰相グラデスト・ウズドガルド。
保守派の急先鋒であり、錬金術師・科学導師である。