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淡雪  作者: 蒼い月
6/13

告白の夜

ビールを飲みながらの食事は翔汰にとって心地好くて、すぐに酔ってしまった。


夜風に当たろうとベランダに出ると夜空には丸い月が街を照らす静かな夜。

一時、月を眺めリビングへと戻った翔汰だったが、悠子は張り切り過ぎとビールを飲んだせいかソファーで寝ていた。


恵美は、何かを考えているのか黙って、お茶を飲んでいる。

ポンッと肩に手を置くと恵美は分かっていたかのように翔汰の手を握り話し始めた。


恵美「ねぇ翔汰…もしもだよ?私が居なくなったら、お母さん、大丈夫かな?」


恵美の家は、お父さんを早くに亡くして悠子さんが、一人で育てたのだ。


翔汰「お前はアホか!大丈夫な訳ないだろ!縁起でもないことを言うなよ!悠子さんの生き甲斐は、お前だろ!?」


ふと、恵美の顔を覗くと大粒の涙が溢れていた。

翔汰は確信した


翔汰「恵美、お前……」


恵美「前から気付いてたみたいだね…やっぱり、翔汰には隠せない。実は、最近、急にお腹痛くなったり、吐き気に襲われるようになってきて、心配になって病院に行ったの…」


翔汰「ぅん。それで?どこか、悪かったのか?」


恵美「私、ガンなんだってさ…余命宣告されちゃった…」


翔汰は、唖然とし固まってしまった。

何も考えられない

かける言葉もない

どうすれば、いい

様々な思いが全身を駆け巡って行く中で確かな事があった。

それは、恵美への想いだ。

翔汰は、再会を果たしてから、恵美のことばかりを考えていたのだ。

それは、友達としてではなく、一人の女性への熱い想いだった。

翔汰は言った


「恵美、余命宣告が、どうした。お前、諦めるのか?悠子さん、どうするんだよ。それに、せっかく、再会できたのに……」


恵美「どうする事も出来ないじゃないのよ…!助かる見込みも、数%よ?」


恵美は、一人で耐えて耐えて耐え抜いていたのだ

翔汰は、見ていられなくなり…

そっと、後ろから抱きしめた…

そして、涙ながらに言った


翔汰「頑張ろ、俺は、恵美の笑っている顔…大好きだよ。俺は、お前が好きだ!だから、ずっと支えるから……そばに居るから泣くな…0じゃないなら、頑張って治そう」


恵美は、翔汰の腕の中で声を殺し泣いていた……


そんな二人を静かに見つめていた悠子は、翔汰と出会い、別れ、再び出会い、そして再び恋人へと戻れた娘は幸せだなと涙をポロリ、また、ポロリと流していたのだった。


恵美と翔汰は、泣いて泣いて涙が流れ尽きるまで泣いた。


悲しくて苦しかった恵美は、翔汰の温かい腕の中に包まれながら

頑張ろう!生きたい!叶うのなら……と強く願ったのだった。


しばらくして、悠子が話し始めた。


悠子「恵美、何で話してくれなかったの…お母さん、恵美の為なら、なんだってするわ…私の可愛い宝物なんですもの」


悠子もまた、涙声…


恵美「ごめんなさい…お母さん、悲しませたくなくて言えなかったの……やせ我慢するしか思いつかなくて…」


悠子は、恵美を力いっぱいに抱きしめながら泣いた…

恵美も、声をあげて泣いている…

翔汰は、親子だけにしようと思い、一人、ベランダで煙草に火をつけた…

もう、泣かない…これから、頑張らなきゃ!恵美を支え、悠子さんを助けなければ!と胸の中で自分に言い聞かせていた。


しばらくすると、悠子が翔汰に珈琲を持ってきてくれた。

「恵美は落ち着きましたか?」と聞くと、胸に秘めた物を吐き出して肩の荷が少し軽くなったのか寝てしまったと悠子が話してくれた。


悠子が話し始めた

「翔くん、ありがとう…今日は、楽しい食事のはずだったのに恵美のことで迷惑かけちゃったわね」


翔汰「迷惑だなんて思うはずがないじゃないですか…恵美のワガママに耐えられる奴ですよ?」


翔汰は、悠子を励まそうと精一杯の冗談を交えた


悠子「あら、失礼ね。あの子はワガママじゃ……ごめんなさい、ワガママだわ」


二人は恵美の話題で笑いながら、これから先に待つ苦難の道を頑張って歩んで行こうと改めて胸に誓っていた。


気付けば、静かな夜は朝を呼び

空は白んで遠い空から太陽が昇ろうとしていた。

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