再会
眩しい朝陽がカーテンの隙間から
「おはよう」と挨拶をしてきた
眠い目をコスりながら私は
もぞもぞとベッドから起き
出掛ける準備をした
外は雪が積もっているが快晴である
朝食を済ませ、玄関から外へ出ると
「キュッキュッ」靴と雪が会話を始めた
私は、滑らないように足早に駅へと歩いてく
見慣れた風景、見慣れた人が通り過ぎて行く
何故だろう
足取りは軽いのに心は重い……
目的がある訳ではないのに街へと出掛ける私
いや、目的はある
ただ、口に出す物ではないと言い聞かせているから
ただのショッピングを装っている
昨日、見かけた元恋人が
とある店で働いているのを見かけたのだ
それ以来、気になって仕方なく
話せなくても良いから訪ねようとしているというのが目的
自宅を出て、25分程度の距離を
倍近い時間をかけて駅へ行き
電車へ乗り込んだ
10分くらぃで、目的地である街へ
日本の中心と言われる東京のど真ん中に降り立った
さぁ、あの人と再会カウントダウンだ
一方、元恋人の朝はというと……
いつもと変わらない朝が
心地よい眠りから目覚めさせてくれた。
目覚めの珈琲を豆から挽いて飲みながら思い出してしまった
何をかというと、夢を見たのだ
忘れたはずの恋人との夢
珈琲の匂いが漂う部屋で夢心地のまま、しばらく、思い更けた
気付けば重い腰を上げて、出勤しなければ遅刻してしまう時間になっていた
ヤバい!
ドタバタの出勤
玄関を出ると雪で真っ白だった
自転車で通勤しようにも出来ない……
仕方ないとスマートフォンを取り出し
職場へと電話
事情を説明したら、店長が怪我しないように、ゆっくりで良いと言ってくれたので助かった
30分くらぃ、雪道を歩いて
やっと、お店へと着いた
ハァハァと息切れをさせていると
店長が、お店自慢の珈琲を持ってきてくれた。
これがまた、凄く美味しくて癒された
店長「今日は、大変だったねぇ。それ飲んだら仕込み始めてね。」
僕「はい!ありがとうございます♪あっ店長に食べて欲しいデザートを持ってきたんですけど…」
店長「なに?」
僕「ミルフィーユです♪昨夜、作ったんです」
店長「へぇ~、貰っていいの?」
僕「もちろんです♪」
店長「ありがとう♪休憩時間が楽しみ♪」
そんな会話をして、珈琲を飲み干して
仕込みに取りかかった。
この時は、これから起きる事を知るよしもなかった……
開店の時間になり、お店を開けた。
しばらくして、常連のお客様が数人来店。
珈琲と苺タルトのセットを注文して雑談している。
話題は、アイドルグループの話題みたいだが、僕には分からなかった。
注文のセットが出来上がったので、テーブルへと運び
僕は、カウンターでコップを磨いていた。
すると、どこか見覚えのある女性が入ってきた。
そう……夢に出てきた元恋人である。
あり得ないはずなのに、現実になった夢
面食らっていると、彼女はカウンターへと腰を降ろし微笑みかけた。
彼女「お久しぶり」
僕「おっおう…元気だった?」
彼女「ぅん。意外と元気」
僕「そうか」
会話が続かない……
思いきって切り出した。
僕「今日は、どうしたの?ていうか、俺が、この店で働いてるの知ってた感じがするけど?」
彼女「ぅん。この間、見かけたの」
僕「そうなんだ。だから、入ってきた時に目で俺を探したんだね」
彼女「そう。」
また、沈黙の時間が流れ出した。
彼女の名前を紹介しておこう。
彼女は、恵美
そして、僕は翔汰という名前。
翔汰「ところで、珈琲でイィか?」
恵美「あっごめんなさい…珈琲で」
翔汰「少し待っててね」
恵美「ぅん。ありがとう」
僕は、珈琲を豆から挽いて淹れた
翔汰「お待たせ、どうぞ」
恵美「ありがとう。イィ匂い…」
恵美は、珈琲をゆっくり口に含み
嬉しそうに飲んでくれた。
恵美「ねぇ、彼女できた?」
翔汰「ん?いや、そんな暇はないよ」
強がってみせた僕…内心、情けない…
恵美「そっかぁ」
恵美は何故か嬉しそうに微笑んでいた。
恵美「実はさ………」
翔汰「ん?なに?」
恵美「うぅん…なんでもない」
明らかに何かを話したい雰囲気だけど
僕は聞かない事にした。
そして、気付けば、夕暮れ時になっていた。
翔汰「恵美、大丈夫か?顔色が良くないぞ?」
恵美「大丈夫だよ。仕事で疲れてるだけだから……今日は、もう、帰るね。ご馳走さま」
翔汰「うん。また、顔見せにおいでよ。珈琲ご馳走するからさ」
恵美「うん。またね」
そう言って、恵美は店を出て
帰宅の途についた。