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晴れのち想われ人

作者: 溝森副露

ピピピピ・・・


 目覚ましの音で目が覚める。日曜の遅めの朝。日の光が薄いカーテンを越して入ってくる。べッドから降りるとTVの電源を入れ、サイフォンでお湯を沸かす。コーヒーを準備しながらTVから流れる天気予報を聞く。


今日は全国的にポカポカ陽気ですが、昼過ぎより想われ人が降る人もいます。


 今日はいい天気らしい。せっかくなので布団も干してしまおうと思ったが、昼過ぎから何やら想われ人が降るとか言っているので少し悩んだ。


ん?想われ人・・・?


 雨でも槍でも鉄砲の弾でもない。人が降って来るとの予報に思わず振り返る。番組はすでにCM切り替わり、手遅れだった。想われ人って一体なんだよ・・・。

 思わずベランダに出て空を見上げる。雲が少しだけある。本当にいい天気だ。何か降ってくる気配はない。


突然曇るのかしら。まぁ一日家にいるしいいか。


 洗濯物と布団を干してしまう。空を気にしながら。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 高度8000メートル上空。少女が見上げる先に大地が見える。頭に装着したレティクルが眼前に二重丸と十字を形作っている。少女の攻撃目標は大好きなあの人。両の手を横に広げて時折、体を捻ったり体勢を変えて落下を続ける。あたりには無数の同じような人たちが落下を続けている。目を離すとすぐに目標を失ってしまうので、目標を見つめたままだ。

 あたりに散らばる同士とは会話をしない。いや、風圧に声が流されるので出来ないと言ったほうが正しい。目で挨拶もしなければ、声をかけることも触れることもない。肉体で何かしなくても、心は皆一つだ。


自分を大好きな人の元へ届けること。


 老若男女様々な人種が大地めがけて突き進んでいる。ものの10分かからぬうちに標的へ命中するだろう。その時まで、同士よ。どうか互いの成功を祈りあおう。

 命中した瞬間、私たちの気持ちを受け入れてくれるだろうか。

 想いは必ず伝わるだろうか。お母さん、お父さん。どうか、私の気持ちが届くと願ってください。きっと素敵な彼氏を、家につれて帰るから。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 サイフォンで沸かしたコーヒーを飲みながら雑誌を読んでくつろいでいると、外から


ドーン


 と爆発音が聞こえてくる。それも、色々な距離から。何だろうと思い、外をのぞこうと立ち上がり、窓際へ移動した瞬間、背後に何か落ちてきた音とともに、家の中にほこりが発生した。


ヒュン・・・ドガァッ


 ゴホゴホと(むせ)ながら振り返ると、ついさっきまで読んでいた雑誌と飲みかけのコーヒーがテーブルごと消滅していた。床がめくれ上がり、天井もめくれ外に出なくても天体観測が出来る家に一瞬でリフォームされていた。ほこりが静まるのを待って大穴の上と下を覗き込むと、ぽっかりと空いた穴からきれいな青空が見えた。下には靴をはいた足の裏が犬神家の一族のように植わっている。靴の裏を見ると、右足と左足に分かれて


貴方を愛しています。付き合ってください。


 と、書いてある。どんな告白の仕方だ。それに今は誰とも付き合う気はない。あったとしてもこんな天空の城のヒロイン真っ青の落ち方をしてくる人となんて付き合いたくもない。

 即刻警察に電話をする。


空から人が落ちてきたのでどうしたらいいですか?


 すぐに処理しに来てくれると言われ、安心した。飲み物を失くしたので冷蔵庫内の水出しコーヒーを飲む。空いた穴にため息をつきながら。半分くらい飲んだ後、思い出したように呟いた。


そうだ。雨漏りを防がにゃ・・・・・・。

コメディ・・・なのか?

こういう無鉄砲な恋愛ってしてみたいですな

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして☆ タイトルが気になって拝読させて頂きました。 天上からダイブする程想われてるのに、主人公が妙に冷静なのが可笑しかったです(*^_^*)
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