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第3回:シドニー

東京のオフィスビルのワンフロアーに雑誌『冒険マガジン』の編集部がある。桜野は編集長の梅園道夫に会った。梅園は40代半ばの男で、桜野が学生のころから桜野の冒険に関する記事を雑誌に積極的に掲載している。


「桜野君、休暇を途中で切り上げて、そろそろ新たな冒険の旅に出かけたくなったのか」と梅園は笑顔で言った。

「ええ、まあ」

「ところで、先日パリに現れたスーパーヒーローのことは知っているかい?」

「スーパーヒーロー?」

「ネットではかなり話題になっている。何者なんだろうね?」

「さあ」と桜野は動揺しているのをさとられないようにして言った。

「可能であればインタビューしてみたいな」と梅園は桜野の動揺には気づいていない様子で言った。

「あのヒーローはどう呼ばれているんですか」

「決まった呼び名はまだないようだ。君ならどんな名前をつける?」

「サクラサムライっていうのはどうでしょう。」

「いいね。うちのウェブサイトでそう呼ぶように提案しよう。それから、紹介したい人がいる。菊永君」


 桜野と梅園が座っているところに、20代半ばの男がやって来た。この男はクールビズということで、ネクタイはしていないが、長袖のシャツを着ていた。


「こちら、うちの編集部の菊永貴君。君にあこがれていてね、君がきょう来ると知ったら是非会わせてくれと頼まれてね」

「菊永です。はじめまして、桜野さんにお会いできて光栄です」

「桜野です。こちらこそそんなに喜んでもらえてうれしいです」

 

 菊永は桜野の左腕にあるブレスレットに気付いて、「桜野さん、きれいなブレスレットしてますね」

「ああ、ありがとう」

「それでは、僕は仕事がありますので、これで失礼します」と言って、菊永はその場を立ち去った。


 トイレの洗面台の鏡の前に菊永が立っている。その顔には不気味な笑みが浮かんでいる。


 数日後、東京のマンションの1室に桜野がいた。左手首のブレスレットから老師の声が聞こえてくる。

「剛、シドニーで事件だ」

「変身」

桜野はサクラサムライに変身した。

「テレポーテーション」

サクラサムライの姿が消えた。


 数秒後、サクラサムライはシドニーのオペラハウスの近くにテレポートした。


「老師、まだ何も起こっていないようです」

「油断するな」


 すると、突然空から甲高い鳥の鳴き声が聞こえてきた。サクラサムライが空を見上げると、全長8メートルの真っ赤なクジャクが降りてきた。クジャクは地上に降りると、上尾筒を広げた。


「熱い」とサクラサムライは思わず声を上げた。


 クジャクの広げた羽からすさまじい炎と熱が放出されていた。


「ひるむな」と老師が言う。

「水の力を使わせてもらうぜ」と言い、サクラサムライは両手からクジャクに向かって水を放出した。しかし、水は蒸発してしまって、クジャクには効果がない。サクラサムライは少し焦ったが、パリで青亀が吐息でエッフェル塔の脚柱を凍らせたことを思い出した。

「凍れ」とサクラサムライが力強く言うと、クジャクの周りの水蒸気の温度が低下して、炎と熱が消え、クジャクの体全体が凍りついた。


 サクラサムライが左腕を挙げてブレスレットに日光を当てると、ブレスレットから黄金の光が出て、クジャクの方に向かう。すると、クジャクの体全体が黄金の光に包まれ、その光の中から赤い光の玉が飛び出した。その光の玉はブレスレットの近くで破裂して、赤い光がブレスレットに吸い込まれた。そして、クジャクを覆っていた黄金の光が消えると、クジャクの姿はなかった。

 

「これでおぬしは火の力を手に入れた」と老師が言う。

「火を思うがままに操る力ですね」


 すると、「サクラサムライ、順調に強くなっているようだな」と若い男の声がした。サクラサムライが後ろを振り返ると、そこに中世ヨーロッパの騎士のような黒いプレートアーマーをまとった者がいた。


「お前誰だ?」とサクラサムライが問うと、「僕の名前はグローブナイト。もっと強くなってくれ。楽しみに待っているよ。テレポーテーション」と言って、その者は姿を消した。


「老師、あれは一体何者ですか」

「いずれわかる」

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