第2回:パリ
サクラ・サムライはパリのシャン・ド・マルス公園にテレポートした。そばにはエッフェル塔がそびえている。パリはまだ朝で人はまばらだ。
「老師、この姿では目立ちます」とサクラ・サムライはブレスレットに映っている老師に話しかける。
「案ずるな」
そこへ、観光客と思われる20代の日本人男性がサクラ・サムライに近づいてきて話しかける。
「すみません、それ何のコスプレですか」
「コスプレじゃない」
「あっ、失礼しました。カッコいいっすね。写真を撮ってもいいですか」
「ああ」
その男は携帯電話でサクラ・サムライの写真を撮る。
「ありがとうございました。がんばってください」とその男は言って立ち去った。
「ほら、言った通りじゃろ」と老師は言う。
「老師、俺はパリで何をするんですか」
「まあ、あわてるな。すぐわかる」
すると、突然複数の女性の悲鳴が聞こえてくる。サクラ・サムライが悲鳴のあがった方向を見ると、エッフェル塔の裏のセーヌ川から体長約8メートルの青い亀が川岸に上がってきていた。悲鳴を上げた2人の若い白人女性は走って逃げている。
「サクラ・サムライ、初仕事じゃ」
「あんな大きな亀をどうするんですか」
亀は吐息でエッフェル塔の脚柱を凍らせると、ゆっくりとサクラ・サムライの方に近づいてくる。
「あの亀を封じて、その力を己のものにせよ」
「どうすれば」とサクラ・サムライは戸惑っている様子で言う。
「どんなに大きくても亀は亀」
「ガラパゴスでゾウガメは見たことあるんだが…。そうか。老師、この姿で俺はどれくらいの力が出せますか」
「100万馬力くらいじゃな」
「わかりました」とサクラ・サムライは自信に満ちた口調で言う。
サクラ・サムライは目にもとまらぬ速さで走り、亀の右前脚の右側で立ちどまる。そして、亀の右前脚を両手で押し始める。亀は横向きに倒れ、あおむけになった。
「ブレスレットに光を当てよ」と老師が言う。
サクラ・サムライが左腕を挙げてブレスレットに日光を当てると、ブレスレットから黄金の光が出て、亀の方に向かう。すると、亀の体全体が黄金の光に包まれ、その光の中から青い光の玉が飛び出した。その光の玉はブレスレットの近くで破裂して、青い光がブレスレットに吸い込まれた。そして、亀を覆っていた黄金の光が消えると、亀の姿はなかった。
「これでおぬしは水の力を手に入れた」と老師が言う。
「水の力?」
「水を思うがままに操る力じゃ」