第1回:発端
1万2000年前
ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸の各地で金色の光が次々と上がる。そして、地球全体が金色の光に覆われる。
2015年、沖縄
夏、昼の砂浜に身長が180センチくらいで30代半ばの男が立っている。競泳パンツだけを身につけたこのがっちりした体形の男の名は桜野剛という。
「俺はこれまでいろんなところに行った。エヴェレストに登り、サハラを横断し、マリアナ海溝に潜った。南極にも行った。どこかに行って戻ってくる。冒険というのはこんな形のものしかないのか」と桜野がつぶやく。すると、突然どこからか老人の声が聞こえてくる。
「わしが力になろう」
桜野の体全体が黄金の光に包まれる。光のまぶしさに桜野は目を開けてはいられなくなる。
1分くらいたって桜野が目を開けると、薄暗い洞窟のような場所にいることに気付く。そして、白髪で白い口髭とあごひげをたくわえ、中国の仙人のような姿をした老人が桜野の前に現れる。この老人は先ほど桜野が聞いたのと同じ声で、「さあ、これを受け取るのだ。これで今までとは違った形の冒険ができるじゃろう」と言い、桜野に桜色のブレスレットを渡す。桜野はブレスレットを左手首にはめる。また桜野の体全体が黄金の光に包まれる。およそ1分後桜野は砂浜にもどっていた。
「今のは夢だったのか」と桜野がつぶやくと、桜野の左手首にあるブレスレットからあの老人の声が聞こえてくる。
「夢ではない。早速冒険をしてもらおう。行先はパリじゃ」
「おじいさん、いきなりですか」
「おじいさんではない。老師と呼びなさい」
「老師、パリはここから遠いので、いろいろと準備の必要が」
「その必要はない。ブレスレットに光を当てて『変身』と言え」
桜野は言われた通りにすると、体全体が黄金の光に包まれた。そして、自分の姿が鎧武者に似た桜色の装甲(ただし、頭部に鍬形のような装飾はついていない)をまとったものに変わっているのに気づく。
「こ、これは何ですか?」と桜野は戸惑った様子で言う。
「それは地球を守る戦士の姿じゃ。その姿の時、おぬしはサクラ・サムライと名乗るがよい」
「サクラ・サムライ」
「そうじゃ。サクラ・サムライよ、おぬしは自分自身を行きたい場所にテレポートすることができる。行先を念じてみよ」
「わかりました。やってみます」
こう言うとサクラ・サムライの姿が消え、数秒後にはパリに移動していた。