3-11:”魔女”のささやき ●
誘拐騒動からいろいろあって、最期になんだかんだでロボバトルに勝利をおさめ、数時間後―――
農民(警備部隊)は、それぞれの帰路につき、ウィル達は迎えに来たシュテルン・ヒルトに戻ってきていた。
ブレイハイドも収容され、西国は撤退。こちらの人的被害は、一部ケガ人がでたものの、奇跡的にほぼなかったといえる。
これで一件落着―――というわけでもなかった。
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「―――エンティさん…これは、まさか…!?」
格納庫にブレイハイドを戻したウィルを、さっそくエンティが待ち受けていた。そして、即席の食卓に座らされ、目の前に置かれたものを見て、
「焦げたタマゴッスか?」
そんな感想を漏らした。額を、タラリと汗が伝う。
「コロッケだよ。ウィル君」
エンティの口調は、普段と変わらない…というか少し、上向き。これは、
……エンティさん、折檻モードになってる!?
目の前の不可思議物体がその証拠だ。エンティは料理を作らない。というか、お願いです作らないでください、とみんなに言われる。
なぜなら―――料理と言う行為を行っているにも関わらず、食べ物に派生せず強い毒性を持つ何か意味不明な物質に変貌するからである。
彼女はその事実にめげず、あえて武器(拷問用)にしている。
それを目の前に置く、ということはイコール、
……死ぬがよい、と!?
つまり、死刑宣告。エンティは怒っているのだ。
「エ、エンティさん。ボク、何かしましたでしょうか?」
「いろいろしでかしたと思うけど?」
「そ、そうッスよね……」
「すごく心配したんだよ」
「本当に申し訳ないッス……」
「だから、食べてね♪」
「どうかお慈悲を!」
「いいから食べろや!」
「ひいいいいいいいいいい!?」
目の前で起こる惨劇に、周囲の老兵達すら戦慄し、目をつぶった。
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強制的に毒物をつめこまれ、口から黒煙吹き上げて倒れるウィルを遠巻きに見ていたアウニールは、呟く。
「―――これは一種のスキンシップですか?”巨乳メガネ”さん」
傍らの”巨乳メガネ”(命名)へと。
「な、何ですかそのニックネーム!?確かに認めます。私は胸大きいですし、メガネかけてますけど、ストレートにそう呼ぶのはどうかと思いますよ!?ていうか、本名で!ヴィエルって呼んでください!」
「分かりましたヴィエラさん」
「ヴィエ”ル”!」