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3-3:作戦名”ランデヴー”【Ⅱ】

 爺さん達の助け(?)で、”シュテルン・ヒルト”から降りた、ウィルとアウニールは、すでに街中にいた。

 前の街である”シア”と比較すると、この街にはそれほど技術的なものはない。

 シャッターは手動だし、車じゃなくて馬車が移動手段だし、家畜の餌の唐草とかが普通に道端に積み上げられてたりする。

 だが、自然とこうも思える。


「―――落ち着く場所ですね」


 確かに、技術的なものは圧倒的に劣っている。それでもここは活気にあふれていた。

 客に声をかける威勢のいい若者の声。

 道で話をする人々。

 時折聞こえる動物の鳴き声。

 どれも無作為に入り混じっていても、それは温かさを感じさせる。

 アウニールにとっては、まさに”不思議”な感覚であった。

 一方、ウィルは―――


 ……やばい、こういうときどうしたら 


 初めての同年代の女の子とのデート(?)に完全に上がりきっていた。


 ……がんばってエスコートしてこい、とか言われたけど、具体的なこと何も考えてなかったッス


 とりあえず、


「―――アウニール、さん?」

「ウィル。なぜ、いまさら”さん”つけに?」

「あ、いや、お腹減ってないかなって」

「食事は、朝食をたくさんいただいたので平気です」

「そ、そうッスか……」


 会話、途切れる。


 ……無言が、沈黙が重いッス


 どこか、意気消沈気味のウィル。

 すると、不意にアウニールから声をかけてきた、


「―――ウィル、緊張しているのですか?」


 その言葉に、ハッと顔を上げるウィル。


「は、え!?」

「私がいるから……でしょうか?」

「そ、そんなことないッスよ」

「嘘ですね」


 ピシャリと言ったアウニールに、う、と言葉を詰まらせるウィル。


「も、申し訳ないッス……」

「なぜ、謝るのですか?」

「いや、せっかくアウニールが街に出たいって、オレを頼ってきてくれたのに何もできなくて」

「平気です。別に期待もしてなかったですから」


 心に杭をぶち込むその言葉。


「ぐは!そ、そうッスか……」


 ウィルは軽く大ダメージを受けた。

 しかし、アウニールは続けた。


「―――そんなに気を使わないでください」


 え、とウィルの口から思わず声が漏れる。


「私は、自分の考えでここに来たいと思っただけです。そのために、ウィルをつき合わせたのは悪かったと思っています。本来、謝るのは私の方です」

「そんなことは」

「実は、エンティから『極力船から下りないように』と言われていました。でも、この街を見たときから、どこか懐かしい感じがして、どうしても行きたい、と思ってしまって……」

「そうだったんスか。なら、アウニールの気の向くままに行くといいッス。こっちはそれについていくッスよ」


 ウィルの緊張は、本人の気がつかないうちになくなっていた。

 彼女が求めた場所にたどりつけるよう、自分は助けになろうと誓ったのだから。

 その言葉に、アウニールはうつむき加減に、


「ありがとうございます。ウィル」


 そう言った。

 




 作業場にて、


「―――まったく、社長じゃなかったら気づかないよ、こんな古代の通信機つかってたなんて」


 エンティはそう言いながら、没収した機材を見つめていた。

 当然、じじい共もいる。


「まさか、ヴァール坊が”モールス”を知っておったとは、不覚じゃったわい」

「私も気がつかなかったよ。時々ピッピなってたのはこれだったなんて」

「ふ、戦時中はコイツが命を左右することもあったのじゃ。長年の相棒よ」

「それはようござんしたね―――ていッ」


 エンティは容赦なく機材の上に、ハンマーを振り下ろした。

 重量に運動エネルギーを加えられた強力な打撃によって、土台ごと細かいパーツが砕け散る。


「うおおおおお!?なんということおおおおお!?」


 持ち主のじじいが絶叫する。

 みるも無残なガラクタへと成り果てたことを確認し、エンティは持っていたハンマーをポイっと捨てた。


「さて、相棒とやらは始末したので本題です。ウィルとアウニールはどこですかぁ?」

「はて?しらんの」

「最近もの忘れが激しくてな~」


「2人の今日の夕飯は私が作っちゃおっかな♪」


「「2人は街にいったぞ!!」」


 じじい2人は顔を真っ青にして、同時に白状した。


「”ジャバルベルク”に?なんで?」

「えっと、それは……ウィル坊がお嬢ちゃんと街に行きたそうだったで、つい手助けをな」

「そうじゃノリノリだったぞ」


 エンティと、エクスはこう思った。


 ウィルがアウニールを連れ出した。


「「あの野郎、面倒なことを……!」」


 エンティは、帰ってきたウィルにとりあえず百叩きをくれてやろう、と考えながらエクスに言う。


「すぐに行って連れ戻してきて」

「ああ、そのつもりだ」


 それを受け、自分の意向とあわせ、エクスはその場に背を向けた。



 

「ウィル、あそこに」

「ん、あれは……鳥の雛?」


 アウニールが思うように先導する形で歩いていた2人は、人の多い繁華街から離れた放牧のエリアに来ていた。

 そこにあった巨大な木の下に、青い鳥の雛が1匹、幼い鳴管を精一杯震わせ、鳴き声をあげていた。


「たぶん、さっきの突風ッスね」


 そういいながら、雛のそばに駆け寄った2人。アウニールが、まだ目も開いていない雛を、両手にやわらかい動作で包むように保護する。

 まだ世界を見ることすらできず、外敵から身を守る術も知らない、か弱い存在。

 それを手の中におさめるアウニールの表情は、悲しそうで、それ以上に慈愛があるようにみえた。

 おそらくウィルににしか分からないほどに些細な表情の変化だった。


「ウィル、巣は見当たりますか?」


 上を見上げながら、アウニールはそういった。


「えっと……小さいけど、あれッスね」


 巣は巨大な木の中にあった。かなり高い場所だ。目測で10メートル以上あるかもしれない。普通ははしごとか使っても届くような場所ではない。


「じゃあ、お願いします」

「え、何を?」

「決まってます。この子を巣に返してきてください」

「マジッスか!?」

「マジです」

「でも高すぎるッス」

「では、この子は見捨てますか?」


 スッと差し出された手の中には、まだ鳴き声をあげ続ける小さな青い雛の姿があった。

 無理だといえばこの雛は、この場に置いていくしかない。そうなれば他の生物に捕食させる可能性が高い。

 自然界の掟だとあきらめればそれまでだが、


「私は見捨てられません。ウィルが行かないなら、私が行きます」


 そう言ってアウニールは木に登ろうとする。もちろん雛を抱えて、だ。


「待った!分かったッス!任せてほしいッス!」


 止めに入ろうと、ウィルはアウニールの後ろからすがりつくように触れる。

 ゆるめに羽交い絞めにするつもりだった。しかし、


 ……あれ?なんか、やわらかいものに触れてるような。


「―――この手はどういうつもりでしょうか?」


 アウニールの言葉にハッとなる。

 ウィルの手が触れていたのは、女の子の上半身ど真ん中より少し上あたり―――つまり、お胸さんであった。


「げ!?」


 というと同時に、慌てて手を離し、後ずさる。

 しかし、アウニールの片手の拳はすでに振りかぶられている。無表情に影が落ちている。


「も、申し訳ないッス!これは不可抗力ッス!事故ッス!だからお慈悲を!」


 そういわれ、アウニールはゆっくりと構えを解く。そして、スっと雛の乗った手を前に差し出し、


「では、この子を大切に持っていてください。決して離さないように」

「わ、分かったッス」


 ……これは巣まで送り届けてチャラにしてもらえる、という流れ!なんとしても成功させるッス!


 そう考えていたウィル。するとアウニールは一言、


「ではお尋ねします」

「なんスか?」

「私の胸……さわってどうでしたか?」

「意外と柔らかかったッス」

「邪念感知完了。鉄拳制裁」


 風を切ったアッパーカットが炸裂。邪念の源(顎下)にクリーンヒット。

 ウィルの体は、ぶほぉっ!?、というこえと共に真上へと吹っ飛んだ。

 10メートル近い高さを飛び上がり、そこで、


「―――ぐえっ!?」


 太い枝に引っかかった。

 その目の前には―――さっき高すぎる、と感じていた鳥の巣があった。


「た、大切に持ってて、ってこのためッスか……」


 そう言いつつもウィルは、手の中に包んでいた雛をそっと、置くように巣の中に戻した。

 巣の中には、まだあと2匹の雛がいた。その雛達が落ちた家族の帰りを待ちわびていたように、寄り添っていく。

 これにはウィルの表情が、痛みを忘れ思わず和んだ。


 ……まあ、これはこれでよかったのかな?


 そう思っていた時―――巨大な影が、目の前に降り立った。いや、実際はそれほどでもないのだが、翼を最大まで広げた鳥は大きくみえるもので、


「あだだだ!?親鳥がつつきに!違うッス、オレは雛をかえしただけで―――!」


 餌を子供に運びに戻ってきた親鳥が、ウィルを敵と思ったのか、翼をばたつかせながら高速でつついてくる。

 鳥に事情を話ながら、必死に腕で身を守ろうとしてウィルは、


「あ」


 枝からズルリと、


「へええええええええっ!?」


 滑り落ちた。 

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