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7-14:その意思、限りなく【Ⅱ】

 一番近くにいた刃の人型が、両腕のブレードを振り上げて”青肩”の部隊に襲い掛かる。


「こいつ…!」


 とっさに手持ちのマシンガンを照準し、浴びせる。

 金属で構築されているが、マシンガンの銃撃の中で刃の人型はたやすく砕け、崩れ落ちた。

 見た目以上に脆い。

 しかし、


『後ろだ!』

「!?」


 振り返った時、別の人型が飛びかかってきていた。

 照準するには間に合わないと判断した部隊員は反射で、腰のブレードを抜き放つ。

 抜刀の軌道で、相手を叩き斬ろうとし、人型のブレードと正面から衝突する。

 だが、その瞬間、


「なに!?」


 相手のブレードが、こちらのブレードを抵抗なく断ち切ってきた。

 その切っ先が、そのままコックピットを切り裂こうと向かってくる。

 斬られる、と覚悟した時、


『――墜ちろっ!』


 叫びと共に、宙にいた刃の人型が横殴りに吹き飛び、砕け散った。


「隊長! ありがとうございます…!」

『近づかせるな! こいつらのブレードの切れ味は、多少いいどころではないぞ!』


 そう言うと、”青肩”の部隊は3機で背中合わせになり、迎撃の陣形をとった。



 ”青肩”の隊長機が、残弾を確認する。


 ……ゼロ、か。


 さっき部下を救った1発で最後だった。

 ”4本持ち”に叩き込む予定だったが、部下を救えたならよしとする。

 だが、どうするのか。

 火器を構えることで、刃の人型はうかつに踏み込んではこない。

 こちらの隙を伺っているようだ。


『…隊長、予備弾倉は』

「さっき、落とされた右腕だ」

『この状況から離脱を推奨します』

「…俺が旗艦に向けて、包囲に穴を開ける。その隙にお前たちは行け」

『拒否します』『おなじく』

「隊長命令だ」

『…っ』


 部下が、声を詰まらせるのがわかった。

 他に方法がないのだ。

 周囲は、一撃でこちらを仕留めるブレードを備えた人型で埋め尽くされていた。

 ”4本持ち”を追ってきたことで、自分たちの部隊は本隊から離れた位置にいる。

 つまり、迅速な救援は期待できない。

 自分たちから動かない限りは。


『…包囲を破る任務、私に任せてはいただけませんか』

「却下だ」

『残弾がまだある自分は、隊長よりも戦闘を長引かせられるという確信があります!』


 誰が犠牲となるのかを選ぶ。

 一番は、自分であるべきだ。

 部隊を率いる者として。

 その時、


『――ならば、誰1人として失われない手段をとるべきであろうっ!』


 声と同時に、1つの機影が斬りこんできた。

 刃の人型が放った斬撃を、回避し、横一文字に斬り飛ばして見せた。

 適格な踏み込みと、必殺の一太刀を見せつけ、敵の集団をわずかに後退させる。


「”4本持ち”…! なんの真似だ!?」

『最後の1発…本来、私は敗るはずのそれで、お前は部下を救った』

「俺は、部下を死なせるために戦場にいるわけではない」

『私もそうだ。ゆえに、共同戦線を望む』

「チームを組む…。俺と貴様が…?」

『迷っている暇はない。斬りこむ。我らは前衛を張ろう。背中から撃ちたくば、撃て』


 正気なのか、と一瞬考えるが、有無を言わさず、”4本持ち”が敵集団の先端へと斬りかかっていく。

 すると、


『隊長に続かせていただく!』『御命のままに…!』『おうさ!』


 後から3機の”機羅童子”が、抜刀して、駆けていく。

 ”青肩”の部隊には目もくれず。


「こいつら、何を考えて…」

『隊長。さっきの”機羅童子”が、予備弾倉を…!』


 部下に言われ、見ると”青肩”の機体の足元にはさっき斬りおとされた左腕が落ちていた。

 すれ違いざまに、置いていったとしか思えない。

 本気なのだ。

 先まで雌雄を決しようとしていた相手が、こちらに背中を預けている。


 ”お前を活かすことができれば、私の勝ちだ”


 ”4本持ち”の言葉が、脳裏に反復する。


「…装填は」

『完了しました!』


 残弾の表示は、最大まで回復している。

 ”青肩”は、右腕を振り上げ命令を下す。


「敵を撃て。標的は――」


 照準をつける。

 その先にあるのは、


「――刃の人型だ! ”機羅童子”への()()に注意を払え!」

了解ヒア!』

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