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6-11:命運の話し手達

 日が上がった正午。

 天井にある窓から日が差し込むその場所が広い。

 東雲家に設けられた”会”の間。

 外からの干渉をシャットアウトできる構造を持った要人との会議のためにある場所。

 そこには、10に近い人影がある。

 まずは東陣営。

 ”東”の長である、東雲・スズ。

 現状では”長”代理としてスズを補助する母、アリア。

 壁を背を預けて、キセルの煙をふかしている、自称”元・東国武神”、ムソウ。

 やや緊張した面持ちで女装した姿してる南武家当主、南武・ランケア。

 短気なのでキョロキョロと落ち着かない北錠家当主、北錠・フォティア。

 ”西雀”と”央間”はそれぞれの持ち場に戻って仕事をしている、…はずだ。

 

「今まで何度も会議あったはずなのに、この場所使うの初めてな気がするんだけど…」

「たいていは飯食ってる最中全員集合して話が終わってるからな」


 そのため、会議を行う前に、早朝から掃除をする羽目になった。

 主にウィルが。


「うむ、いい場所じゃ。ここなら心おきなく話せるというものじゃ」 

「ここで、世界のあり方が問われる、ということですか…」


 別の方向から声がする。

 ”西”陣営には3人いる。

 ニコニコといつもの表情で、両の手を身体の前で合わせて後方に控える、”爆撃翼”リヒル。

 ”西”の王たる女性、アンジェリヌス=シャーロット。

 その守護役たる”最速騎士”の称号を持つ男、リファルド=エアフラム。

 その内、アンジェとリファルドの影は1つに重なっている。


「ちょっと、王様。どうして”最速騎士”の膝の上に座ってるわけ? ここ、イチャつく場所じゃないんだけど?」

「分かっておる。しかし、これには一身上の都合というものがあってじゃな…」


 何かを言いづらそうな雰囲気が感じられた。

 まともなはずのリファルドも、ハハハ、と苦笑いを浮かべるばかり。

 しかし、スズはお構いなしに尋ねる。

 

「何よ? はっきり言いなさいよ」

「いや、その…、少しばかり、身体の節々が痛くての…特に腰周辺が猛烈に、の…」


 は?、スズはいぶかしげな顔をするが、


「「「ああ、分かるわ…」」」


 スズ以外の女性陣の声が揃った。

 

「え? 何、この一体感…?」

 

 わけが分からん、というスズの肩に両側から手が置かれる。

 アリアとフォティアである。

 

「スズちゃんも大人になれば分かるわ…」

「そうだよチビ姫。あの痛みは、ちょっと…。激しいやつの後はね…」

「何なのよいったい!?」


 スズが声をあげる。

 すると、


「…そろそろ開始の時間となっているが、よろしいかな?」


 3箇所目から声が来た。

 今回の会議を提案した大元。

 長らく、交易のみで繋がりを持ってきた不可侵の地、”中立地帯”陣営だ。

 その”代表者”である、ヴァールハイトは腕を組み、”東”の”西”の陣営の中間に立つ位置にいる。

 その傍らにあるのは、カナリスの”会計”である小柄な少女…、の姿をした悪女、エンティ=ケットシー。

 そして、メガネをかけている”秘書”がいる。

 見て、その場にいる誰もが首をかしげた。

 見たことあるけど誰だっけ?、と。

 

「ああ! 忘れられてる! 世界レベルで忘れられてる! 誰か私を覚えてくれてる方はいらっしゃいませんか!?」

「おいおい、俺様は覚えてるぜ。”お胸ちゃん”」

「やめてくださいよ!? 世界レベルで認知されたらどうするんですか!?」

「もうめんどくさいから”メガネさん”でいいでしょ。最初から読んでくれてる人なら覚えてるからさ。たぶん」

「容赦ねぇっ!?」

「ほら、本性出てるって。引っ込めて引っ込めて」

「そうですね…。みなさん、とりあえず”清楚な秘書さん”でひとつ…」

「”メガネさん”、開始時刻過ぎてない?」

「”メガネさん”、いいボディバランスだね。アタシといい勝負できるよ」

「”メガムネちゃん”、じいさん達元気か~」

「ああ! もう定着し始めてるぅーっ!? というか新しいのが聞こえたんですけどぉ!?」


 現場が早くも軽い狂乱状態に陥りかけている。

 ヴァールハイトが咳払いをして、その場を鎮める。


「…始めてもよろしいかな」


 言葉を受けた、各陣営もまた咳払いで気持ちの乱れを正す。

 ”メガネさん”が一番何か言いたそうだったが、グッと堪えてもらった。


「―――では、中立地帯の”代表”ヴァールハイトが宣言する。ここに、”東””西””中立”における3国間会議をとりおこなう! 此度行われるのは世界のあり方を問うもの! 参加し、意を交わすものは、各陣営代表の挙手にて返答を願いたい!」


 声が上がり、スズとアンジェが同時に挙手を見せる。

 成立する。

 15年前の時を経て、全てを話す場が。

 ここより始まるのだ。

 世界の新しいあり方が。



 ……始まったか。


 暗く閉ざされた”ソウルロウガ・R”コックピット内で、エクスは紅い眼光を灯していた。

 脳裏に展開されるのはあらゆるデータであり、現在行われている会議の様子をリアルタイムで確認している。

 ”紅”の機能による簡易的なハッキング。

 それも未来技術を用いた、探知不可のもの。

 

 ……思考がそのまま、俺を形造る、か。


 初めて使ったが、違和感なく扱えている。

 まるで最初から知っていたかのように。

 データに潜るの間隔は言うなら、扉ではなく、窓から入るようなもの。

 窓に小さな穴をあけ、鍵を開け、最低限の侵入スペースを確保して行うような感覚。

 それらは、”ソウルロウガ・R”がエクスの能力を拡張する機能を合わせることでさらに増幅、強化される。

 

 ……過去の世界の人々のあり方…


 信じ、目を向け、動こうとする者達がいる。

 エクスはそれを感じていた。


 ”君は、これからこの世界が迎える結末の1つを知っているのだろう。しかし、それを言う必要はない。そこには我々のような何も知らぬ者達が、自ら力で導き出さなければならないのだから”


 別れ際、ヴァールハイトに言われた言葉がある。

 力を振るうべきは、皆同じ、とそう言っていたのだ。

 エクスは、自分が特別でないということを分かっている。

 ちっぽけな、命1つの生命だ。

 だから、


 ……果たすさ。俺は、俺のすべきことを…。


 そう思った。

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