未来のプロ野球選手?黒崎くん
俺は金本満背が高く、顔はそこそこ……だと自分では判断している。
サッカー部に所属している中学三年生だ。
一か月くらい前に未来からやってきた1991年生まれなのに未来の技術で若返ったらしい。
林修という2011年生まれの俺と同じ歳の、同級生が実家の相撲部屋に居候している。
修が言うには、俺たちは1991年生まれの同級生だったらしいが……
***
――ある日の昼休み
修は休み時間には、必ずクラスの子に囲まれている人気者だ。
転校してきてから一か月とちょっとしか経ってないのにクラスには俺より馴染んでいる……
俺もクラスでぼっちというわけではないのだが、複雑な気分になる。
嫉妬しているわけではないと思う。俺も15年しか生きてないからこの気持ちが何かわからない。
昼休みに修が俺の席に近づいて来てくれた!
少しドキドキする。これは恋じゃないと思うんだが……
「かねやん! そういえば黒崎くんはちゃんと野球やってるんだよね? グレてないよね?」
「野球やってるよ! プロ目指してるよ!」
黒崎くんとは小学校からの同級生、黒崎守の事だろう。
黒崎は野球をずっとやっていて、地元の埼玉県さいたま市うなぎ区でも、『将来プロになれるんじゃないか!?』とウワサされているちょっとした有名人だ。
「黒崎くんに会いたいんだけど、何組にいるの?」
「一組だよ! じゃあ今から会いに行こうよ!」
実は俺は黒崎……守とは仲が良い。だけどクラスが違うから最近話してなかった。
どうせクラスに居ても面白くないので会いに行ってみるか!
ちなみに黒崎守は背は俺より低いが、野球をやっているのでガタイは俺よりゴツい、顔は……俺よりかっこいいが女の子にモテる顔というより男にモテる顔だ。
女の子と付き合っているという話は聞いてない。男友達と遊んでる方が今は楽しいのだろう。
かく言う俺もそうだし。でも彼女がいる友達は羨ましい……
***
「初めまして! 黒崎くん! 僕は林修! 未来からきた君の友達だよ!」
クラスの友達と話していた守を呼び出してソッコーで修はいつもの決め台詞を言う!
「えっ! 林修!? いや会ったことないけどな……それに未来からってなんだよ!?」
もう俺は慣れてきたが、初めて会う守は戸惑う。そりゃ当然だ。
「あんま気にするなって〜」
修は体をくねらせながら冗談を言う。いや説明してくれよ……
「いや気になるよ! おい満こいつ何者なんだ!?」
「守……こいつは……」
俺は林修が俺や幼馴染たちの悩みを解決してくれた事や、俺たちは未来から来たことを信じていることを伝えた。
すると守は修に問いかける。
「じゃあ、林は今俺が何に悩んでるかわかるか?」
守は冗談めかした感じではなく、深刻な口調で聞く。
守の悩みなんて聞いた事ないけどな……何か抱えているのだろうか?
頼むぞ! 修!
「知らないよ」
修は真顔で言い切る! いや知らんのかい!
「え? し、知らない! じゃあ俺は将来はどうなるんだ?」
こんどは冗談を言うような明るい口調で言う。
……多分コイツはダメだと思ったんだろう……
「黒崎くんは将来プロ野球選手になるんだよ! スワローズで活躍するんだよ!」
修が明るいく言う。俺は「ありえるな」とちゃちゃを入れたが、これを聞いた守の顔は暗くなる。
「林……俺はスワローズにいつ。どのポジションで入るんだ……」
守はさっきまでの様子とは明らかに違う。野球関係で何かあったのか!?
「黒崎くんはスワローズに高卒でピッチャーとして指名されて入るんだよ!」
「何言ってるんだ! 俺がピッチャーで入れるわけないだろ!」
修は明るく守の未来? を伝えたが、それを聞いた守はブチ切れる!
中学生になってから守のキレたところは見たことがない……修も固まっているし、周りの子も驚いている!
それに守はシニアチームのエースだったはずだ。プロになるならピッチャーだろう。
「おい……守。何があったんだ。こいつ……林修に悩みを正直に話したら何か変わるかもしれないぞ」
ここは俺がフォローするしかない! それに守に何があったのか俺も気になる。
守は淡々と話し始める。
「実は俺……右肩を壊したんだよ……一応生活には問題ないんだが、もう投げれないんだよ……」
守の顔は今までに見た事がない、絶望した顔をしていた……修は腕を組んで黙って聞いている。
修は黒崎守の悩みも解決できるのだろうか?
「え!? そうなの! 修! 未来の道具でなんとかならないの?」
ここも俺がフォローするしかない!
「スポーツの怪我は治せないよ。黒崎くん……野球は続けてるの?」
そうなのか!? 未来の道具だろ! 万能じゃないのか?
「ああ……チームには置いてもらっているよ……今はリハビリ中だけど……」
守はうつ向いて答える。
「黒崎くん! 左投げに転向したらいいじゃん!」
「チームメイトからも言われたよ……でも俺は右利きだし、左投げじゃ上手く投げれないんだ。だからプロになるのは無理だから高校では野球を辞めようと思ってるんだ……」
修の素朴な提案に守は淡々と答える。
守は落ち着いているように見えるが、仲がいい俺には、守がどれだけプロ野球選手になりたかったか知っているので、この決断に至るまでに相当考えたのだろう。
野球を辞める選択を選ぶのはきついよね……俺もスポーツをやってるからわかる。
俺が何も言えないでいると……修はあっけらかんと一言
言う!
「黒崎くんは、スワローズにピッチャーとして入るけど、活躍するのはファーストになってからだよ」
この一言で守の顔が一気に変わる!
「ファ、ファーストで俺は活躍するのか! 林! その時に俺は左投げだったのか!?」
「さあ……僕あんまり野球見ないしわからないな……ただバッティングが評価されていた事は知ってるよ!」
「そうか! それなら! なあ満! 林! 今日の放課後時間あるか!?」
急に守は元気になった! 一体何が守の気持ちを変えたのだろう?
***
俺たちは公園に集合するように守に言われた。
「グローブを持ってきてくれ」
と言われたので持って来た。ちなみに修は持ってなかったらしく、未来通販で注文してパーカーのポケットに入っている。
未来の通販便利すぎない? やばいよ……
「おう待たせたな! 左投げ用のファーストミット買うのに手間取っちまった!」
やって来た守はいつもの元気な様子だった。
俺たちは三人でキャッチボールを始めた。
守は左投げでもちゃんと投げれている。修もちゃんとキャッチボールができている。しかも結構上手い。
「守! 左でもできるじゃないか!」
「まあ、右投げのピッチャーでも左でキャッチボールくらいはするからな」
「じゃあ左投げでピッチャーをやればいいんじゃないか?」
「いや……利き手じゃない方でピッチャーやるのは大変なんだ。アマチュアではやれるかもしれないけど、俺の左肩ではプロにはなれないって監督に言われたんだ」
そんなもんなのか? マンガとかではよくある話だと思うが……
「かねやんは全然わかってないね! プロのピッチャーってやばいんだよ!」
修が自慢気に言う!
「いやおまえ、サッカー選手だったんだろ! 野球にも詳しいのかよ!?」
「そこそこ知ってるよ。僕は野球一家だったし、黒崎くんはこれからファーストでやってくんだね! 良いと思うよ!」
俺のツッコミに修は微笑みながら答える。え!? じゃあなんでサッカーやってたんだよ!
「ああ、ファーストなら左でも守れるし、俺の足じゃ外野は無理だしな!」
守も微笑みを浮かべて答える。
「あのさ……俺は野球の事はだいたい知ってるけど。守。なんでサードとかキャッチャーやらないの? 内野手ならできるんじゃない?」
足が遅い選手のポジションってファーストだけじゃないと思うんだが……
「かねやんはホントわかってないな〜! 左投げだとサードとキャッチャーできないんだよ!」
「え!? 守! そうなの!?」
「そうだよ! ははは! 満はわかってないな! サードとキャッチャーで左投げでプロで活躍した選手はいないんだ! 送球する時に左投げだと不利になるからね!」
守は少し笑いからかうように俺に説明してくれる。
「え!? マジで! ファーストなら大丈夫なの?」
「ああ! そうだよ! ファーストなら左投げでもプロで活躍している選手はいるんだ!」
俺の疑問に守は答えてくれた。
「野球って難しいんだな……てっきり野球は左投げが有利だと思っていたよ」
そんな事を話していると、突然! 米津玄師の「アイリスアウト」が流れる! 一体なんだ!?
「やばい! 不動山部屋の呼び出しだ! ごめん黒崎くん! 僕行かなきゃ!」
不動山部屋からの着信音をアイリスアウトにしてるの!? 修はどんだけ米津玄師好きなんだよ!
「おう! 林! また今度キャッチボールに付き合ってくれよ!」
守は気にしてないみたいだ。コイツ思ってたより大物かも……
「黒崎くん! 僕らもう友達だよね!? 僕の事は修って名前で呼んでね!」
「ああ! わかったよ修! 俺のことも名前で呼んでくれよ!」
「なに言ってるんだよ黒崎くん! 僕にとっては黒崎くんは一生黒崎くんだよ! 僕はもう行くよ!」
そう言い残し修は去って行く! 修は黒崎くんって呼ぶことにこだわりがあるらしい。
俺と守は修が嵐のように去った後もキャッチボールを続けていた。
「名前で呼んで欲しいな……なんとかならんかな満……」
「わからないよ……修とは会ったばかりだし、修は謎が多いんだよ」
守はテンションが下がっている! 話題を変えないと……
「なあ守。高校はどこへ行くんだ?」
「それが今考えてるところなんだ。右肩壊したから野球では進学できないし……そうだ満はどの高校へ行くんだ?」
これを聞かれた時に俺はいいアイデアを思いついた!
「なあ……おまえもうなぎ自由高校に進学しないか?」
「え!? うな高!? 満はうな高に行くんか!?」
「ああ、そうなんだ! 埼玉うなぎFCの幼馴染の男たちといっしょにね! もちろん修も行くよ!!」
守はそれを聞いてニコッとしてこう言った!
「それは面白そうだ! うな高の野球部は結構強いし俺も行くわ!」
***
この後、黒崎守は、両親やシニアチームの監督と相談して正式に「うなぎ自由高校」に進学する事を決めた!
これでクソ暑い夏にある高校野球の応援が、辛くても乗り切れるはずだ! 仲が良い友達がいたら試合に出ていたら応援したいもんね!




