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カーディア  作者: アデル
第一章 第四項 最深部への門
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18

『最終判決――存在の価値』


 


最終領域で形を取り戻したアシェルの周囲が、

ゆっくりと変質を始めた。


黒と白の層が円を描き、

まるで巨大な審判の円卓のように整列する。


その中心に、アシェルは立たされていた。


ノワはアシェルの背にしがみつき、

震えながら周囲を見回す。


――あしぇる……

――ここ……“はんけつ の ま”……

――せかい が……きみ を はかる とこ……


アーカーの声が、

円の外側から降りてきた。


『ここから先は、試練ではない。

 “判定”だ。』


アシェルは前を睨む。


「判定……?

 俺の存在を、世界が決めるというのか?」


アーカーは静かに告げた。


『世界はお前をまだ“受け入れていない”。

 だが拒絶もしていない。

 その中間だ。


 ゆえに――

 私が“世界の代理”として判定する。』


アシェルは拳を握る。


「代理……?

 お前はそんな役目まで持っていたのか。」


アーカーの声に、

初めて疲れのような色が混ざる。


『私は塔の管理者ではない。

 塔を創った“名を持つ者”の残響。

 その役割のひとつが“存在の判定”。』


(塔の主……

 アーカーの“本体”は別にいる……)


アシェルが考える間に、

円卓を構成する黒白の層が光り始めた。


アーカーが宣言する。


『アシェル・ラカント。

 お前の存在の価値――

 因果世界にとって“許容か、排除か”。

 それを今この場で下す。』


ノワがアシェルの手を握り、震える。


――だめ……!!

――あしぇる は……きえる ひと じゃない……!!

――われ が……あかし……になる……!!


アーカーがノワを見る。


『証人か?

 影にしては、よく喋る。』


ノワは震えながらもアーカーを睨む。


――われ は かげ じゃない……!

――あしぇる を……しってる……!!

――きみ より……ずっと……!!


その言葉に、

アーカーがほんの少しだけ息を飲んだ気配を見せた。


 



◆アーカー、本体の“影”を現す


円の外側に――

巨大な影が立ち上がった。


アーカーの姿が揺らぎ、

一瞬だけ“異形の構造”が透ける。


骨のようで、

糸のようで、

光のようで、

形容できない“情報の塊”。


アシェルは思わず声を漏らした。


「お前……

 人の姿をしていなかったのか……?」


アーカーは淡々と答えた。


『これは私の“本質”ではない。

 理解されない構造を見せれば、

 お前は精神を壊す。

 だから仮初めの姿を使ってきただけだ。』


(つまり、アーカーの本体は……

 因果の外側から塔の主に抜き出された“情報生命体”か……?)


アーカーの気配が更に濃くなる。


『アシェル・ラカント。

 お前の“名”は特異だ。

 世界に依存せず、

 世界を引き寄せる名。

 そのような名を持つ存在は――

 通常、世界から拒絶される。』


アシェルは声を荒げる。


「ふざけるな。

 俺は、この世界で生きてきたんだ。

 拒絶される理由なんて――!」


アーカーは遮った。


『拒絶の理由は“世界への干渉力が強すぎること”。

 お前の名は、世界の線を上書きできる。

 それは――世界の秩序を脅かす。』


アシェルは息を呑んだ。


(俺の……名が……

 世界を“変えられる”……?

 そんな……)


ノワが必死に訴える。


――でも……!!

――あしぇる は くるしんで……

――がんばって……

――じぶん を えらんだ だけ……!!

――せかい を……こわす ひと じゃない……!!!


アーカーは静かに首を振る。


『善悪ではない。

 構造の問題だ。

 “影響力の強い存在”を世界がどう扱うか。

 その判断を――今から行う。』


 



◆アーカーの宣告


黒白の層が螺旋を描き、

アシェルの足元へ吸い寄せられる。


重力のような圧力が全身にかかり、

アシェルは膝を折りかけた。


「う……ぐ……!!

 これは……!」


アーカーの声が響く。


『これは“世界の重さ”だ。

 お前の名が、この世界に耐えられるかどうか。

 適合すれば残る。

 適合しなければ――排除される。』


ノワが叫ぶ。


――あしぇる を……ころさないで……!!

――きみ は……ただ の……“かんしゃく” で……きめてる……!!


アーカーが冷酷に言う。


『私は感情では動かない。

 だが――』


そこで、アーカーの声にかすかな感情が混ざった。


『――アシェル・ラカント。

 お前は世界にとって“危険な例外”だ。

 それは事実だ。』


アシェルの心臓が冷える。


(……危険……

 俺が……?)


アーカーは淡々と結論を告げた。


『ゆえに――

 お前の存在は、この世界にとって“不適合”。』


ノワの声が絶叫に変わる。


――いや……いや……!!

――あしぇる は……!!

――“そんざい していい ひと”!!

――われ が……あかし……!!!


アーカーは告げる。


『最終判決――

 アシェル・ラカント。


 お前の存在は、

 この世界から排除されるべき構造。』


アシェルの足元が崩れ始めた。


黒白の層が割れ、

底のない深淵が口を開ける。


アーカーが宣言する。


『――消えろ。

 世界は、お前を“必要としない”。』


アシェルの身体が崩れ落ちる。


ノワが泣き叫びながら手を伸ばす。


――あしぇる!!!!

――にど と……はなさない……!!

――われ が……つなぐ……!!!


アーカーの声が重く落ちる。


『影では“世界の判定”は覆らない。

 例外は排除される。

 それが理だ。』


アシェルは深淵へと沈みながら――

ただひとつの言葉を口にした。


「……ノワ……

 俺は……

 まだ……

 終わっていない……」


そして、闇に消えた。

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