表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カーディア  作者: アデル
第一章 第三項 復讐者の旅路・序章
48/83

18

『第二段階:黒核覚醒の兆し』


 


アシェルの拳がサリエルを捉えた衝撃の余韻が、

空間にまだ微かに残っている。


だがサリエルの表情に動揺はない。

その眼差しは、むしろ先ほどより鋭く、深い。


「……理解した、アシェル。

 お前の黒核は“正常な破壊者”ではない。」


アシェルはゆっくりと体勢を整え、肩で息をした。


「そんな分類はどうでもいい。

 お前を越えれば、それで……」


その瞬間――

胸が焼け、黒核が震え上がった。


「ッ……!?」


ノワが叫ぶ。


――あしぇる!!

――“おきてる”!!

――くろかく が……べつ の かたち に……!!


アシェルの胸の黒核から、

影のような“もう一つの輪郭”が溢れ出した。


肉体の表面を走る黒い線が、

まるで生き物のように蠢き始める。


アシェルはその中で、

自分の“意思”が淡く引き剥がされていく感覚に震えた。


(……だめだ……

 これ以上は……俺じゃなくなる……!)


サリエルは興味深げに言う。


「それが“第二段階の覚醒”か。

 黒核が宿主の因果系統を上書きし、

 一時的に“本体と直結する形”へ移行する状態。」


アシェルは唸るように声を絞り出す。


「……俺は……覚醒なんて望んでない……!」


サリエルは首を横に振る。


「違う。

 望んでいるのは黒核だ。

 破壊の最適化こそがその本能だ。」


ノワが必死にアシェルの前へ飛び込む。


――やめて!!

――あしぇる を とらないで!!

――あしぇる は “われ の ぬし” だ!!


アシェルは意識を引き戻すように叫ぶ。


「ノワ……!

 俺はまだ……大丈夫だ……」


しかし、身体は明らかに“大丈夫”ではなかった。


 



◆黒核の“第二段階”が始まる


アシェルの視界が暗転し、

サリエルの姿が黒い線の集合体に見え始めた。


音が薄くなり、

代わりに“世界の構造音”が聞こえる。


(……やめろ……

 これ以上見えるようになれば……

 俺は人ではなくなる……!)


黒核がささやくように囁く。


《――イラナイモノヲ、コワセ》

《――ソレダケデ、セカイハカタチヲトリモドス》

《――オマエノイタミヲ、ケスホウホウハ“コワスコト”ダ》


アシェルは歯を食いしばった。


「黙れ……

 俺は……ただ破壊するだけの存在じゃない……!」


ノワが震えながら抱きつく。


――あしぇる!!

――もどって!!

――きみ は “ひと” だ!!

――“われ の よびかけ” に、こたえて!!


その声が引き金になった。


アシェルの意識がわずかに戻り、

荒れ狂う黒核の渦の端で踏み止まる。


(……まだ……

 俺はまだ、俺だ……!)


だが、黒核の暴走は止まらない。


アシェルの足元に走った影が、

数十本の刃に変形し、無意識にサリエルへ向かう。


サリエルはそれを紙一重で避け、

つぶやくように言った。


「……ノワ。

 お前は間違いなく“この男の楔”だ。」


ノワが怒りに震える。


――“くさび” じゃない!!

――“とも” だ!!


サリエルは珍しく表情を変えた。


「友……?

 未分類因果体が、宿主と“友”を名乗るとは……

 面白い。」


アシェルは叫ぶ。


「ノワは友達だ。

 お前の価値基準で語るな!!」


黒核の刃がさらに伸び、

アシェルの背に黒い翼のような影を作り始める。


サリエルは小さく頷いた。


「……やはり、お前は“例外”だ。」


「破壊者でも修復者でもない。

 黒核の設計から逸脱し、

 独立した自我を持ち、

 未分類因果体と協力しながら暴走を抑える……」


アシェルは息を荒くしながら言う。


「……分類なんて……

 どうでもいい……」


サリエルは断言した。


「お前だけは、どの未来にも“書かれていない”。

 どの構造にも“位置づけられない”。

 因果の外側にも内側にも属さない存在。」


「――アシェル、お前は“世界が定義できない存在”だ。」


アシェルの目が揺れる。


(世界が……俺を定義できない……?

 俺は……そんな存在なのか……?)


サリエルが手を構える。


「だからこそ排除すべきだ。

 世界の整合性を保つために。」


ノワがアシェルを抱き寄せて叫ぶ。


――あしぇる!!

――また くる!!

――じぶん を まもって!!


アシェルは黒核に飲まれかけながらも構え直す。


「……来いよ、サリエル……

 俺の存在を定義できないなら……

 殴られて覚えろ……!!」


サリエルの目が光る。


「第二段階――始める。」


空間が崩壊し、

黒核が完全暴走へ向かい、

戦闘は激化の頂点へ向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ