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『第一次交戦:観測者サリエル』
青白い空間が歪み、
塔が戦闘形態に切り替わった瞬間――
サリエルは一歩、前に進んだ。
ただそれだけで、空間が裂ける。
アシェルは息を呑む。
(……動いていない……
いや、因果が“動いた”……!)
サリエルは淡々と告げた。
「お前の黒核――
その力は制御できていない。
今のままでは、復讐どころか自分すら壊す。」
アシェルは拳を握りしめる。
「俺のことは俺が決める。」
サリエルは手を挙げた。
「では、見せてみろ。
その未完成な力で……私に届くのなら。」
空間が激しく揺れ――
次の瞬間、サリエルの姿が消えた。
◆
◆サリエルの攻撃:観測者の力
アシェルの背後で光が弾ける。
(来る……!)
振り向いた瞬間、
サリエルの指先がアシェルの眉間へ触れようとしていた。
その距離、0.1秒。
だが――
アシェルの黒核が自動的に反応した。
「……ッ!」
アシェルの体が勝手に動き、
サリエルの未来位置へ向けて拳を突き出す。
サリエルはあざ笑うかのように後退した。
「黒核が勝手に動く……か。
やはり“破壊者寄り”の傾向が強い。」
アシェルは苦しげに胸を押さえる。
(……これ……俺の意志じゃない……
黒核が……サリエルへの“最適破壊”を選んでる……!)
ノワが叫ぶ。
――あしぇる!
――きみ の こころ が すわれてる!
アシェルは息を荒くしながら言った。
「くそ……
こいつ……“敵を見た瞬間に殺そうとする”……
それが俺の中に……」
サリエルは手を組み、こちらを見つめる。
「黒核は世界を修復するための力。
その根源は“余計なものの削除”だ。
お前が破壊者へ傾いているのは当然だ。」
「だが――
お前が戦っているのは、私ではない。」
アシェルの表情が一瞬揺れる。
(戦っているのは……黒核……?)
◆
◆黒核暴走:アシェルの肉体が“武器化”する
アシェルの腕が黒く染まり、
肘まで影のように変質し始める。
形は不規則で、まるで“刃”だ。
アシェルは恐怖を覚える。
(……やばい……
このままだと俺は……人間じゃなくなる……!)
ノワが震えながら抱きつくように影を広げた。
――あしぇる!
――とめて!
――とめて じぶん を!!
アシェルは押し潰されそうな痛みに叫ぶ。
「止まれ……!!
俺の体を勝手に使うな!!」
だが黒核は止まらない。
サリエルはその様子を“興味深い実験”を見るように観察していた。
「その状態こそ、黒核が求める姿だ。
破壊者――いや、“修復者の逆因子”。」
アシェルはサリエルへ向かって暴走状態のまま走り――
サリエルの手のひらがこちらを向いた瞬間、
空気が崩れた。
◆
◆サリエルの反撃:因果切断の掌
バシュッ!!
アシェルは地面に叩きつけられた。
胸の黒核が悲鳴を上げ、
体中の因果線が乱れて視界が白くなる。
(……なにを……された……?)
サリエルは淡々と説明した。
「私はただ、お前の“数秒後の存在理由”を切り取っただけだ。
結果として、肉体がバランスを失った。」
ノワが激しく震える。
――とんでもない……
――あしぇる の からだ を “みらい から ころそう と した”!!
サリエルは続ける。
「観測者とは、時間を操るのではなく、
“因果の選択を読み取る者”だ。」
「お前の動きは全部見えている。
黒核の暴走も。」
アシェルは歯を食いしばる。
(……全部……読まれてる……
未来の俺すら、手の中にある……)
ノワが涙のような声で叫ぶ。
――あしぇる
――たたかいかた を かえよう
――きみ は “こわす” だけ じゃない
――“よむ こと” も できる!
アシェルの目が見開く。
(……読む……
俺はサリエルのように未来を読むことはできない。
だが――)
「俺にも“出来ること”がある。」
サリエルが静かに問う。
「何だ?」
アシェルは立ち上がる。
「お前は“未来の最適解”を選んで攻撃してくる。
だが俺は……“未来の破壊”を選んで動く。」
黒核が光り、
アシェルは拳を構えた。
(サリエルの未来予測が届かない位置……
“結果が存在しない動き”なら、読めないはずだ!)
ノワが叫ぶ。
――あしぇる!
――それ は……
――“いんが の ぬけみち”!!
アシェルは床を蹴り――
◆
◆“結果のない動き”でサリエルの未来予測を破る
ガッ――!!
アシェルは“未確定の動き”で動いた。
足を出す角度、重心、視線、筋肉の動き――
そのすべてが矛盾している。
結果も予測も成立しない。
サリエルが初めて驚きに目を見開いた。
「……読めない……!?
未来が……存在しない動き……だと……?」
アシェルは叫ぶ。
「未来が読めないなら、俺は読ませない動きで殴るだけだ!!」
ドガァッ!!
アシェルの拳が、サリエルの腹部を捉えた。
サリエルの身体が後退し、
空間が大きく揺れる。
ノワが歓喜する。
――あしぇる!
――やった!!
しかしサリエルはすぐに体勢を整えた。
「……見事だ。
だが、お前の黒核は暴走寸前だ。」
アシェルは苦しそうに胸を押さえる。
(……限界が近い……
でも……勝てる……!)
サリエルは拳を握り、
「続けよう。
破壊者アシェル。」
アシェルは構え直した。
「ここでお前を越えなければ、
俺は前に進めない。」
ノワが背後で光る。
――いこう
――あしぇる
――“かくご の せん” だ
戦いはさらに激化する。
だが――
この交戦はまだ“第一次”。
勝敗は、決してついていない。




