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カーディア  作者: アデル
第一章 第三項 復讐者の旅路・序章
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『第二層:価値選別領域』


 


第一層のループを破り抜けると、

光の裂け目の先には――

白すぎる空間が広がっていた。


床も壁も天井もない。

境界の曖昧な白の海。


ただ一点だけ、

黒い柱が立っていた。


アシェルは眉をひそめる。


「……ここが第二層か?」


ノワは震える声で答えた。


――あしぇる

――ここ は “きみ の かたち を はかる とこ”

――きみ を “かちづけ” しよう としている


アシェルは言葉を失った。


(俺の……価値?

 村を消した思想……

 “価値がない者を削除する”あの論理……

 その原点がここか)


塔の冷たい声が響き渡る。


『選別領域へようこそ。

 被験者アシェル・レイヴ。』


塔そのものが喋っている。

白衣の観測者の声とは異なる、無機質で感情のない声。


『これより“価値評価”を開始する。

 基準:因果密度、未来寄与度、存在正当性。』


アシェルは目を細めた。


(正当性……?

 存在に理由を求めるのか……)


塔の声は続く。


『基準値に満たない場合、

 あなたは【存在不適合】と判定されます。』


ノワが震え、影が縮む。


――あしぇる

――きみ を けす きかん だ

――ここ は “へいき” じゃない

――“さばき” だ


アシェルは一歩前へ。


「来いよ……

 俺はもう“価値”なんて言葉で揺らがない」


 



◆塔による“価値評価”


黒い柱がゆっくりと光を放つ。


そこから、声が幾重にも流れ始めた。


『あなたの妻は、価値が低いと判断された。』

『村は維持コストに対して寄与値が少なかった。』

『あなた自身も、社会的価値は低い。』

『あなたは国に貢献しない。』

『あなたの存在は、因果全体の負担である。』


一つひとつの声が、心臓を刺してくる。


アシェルの拳が震えた。


(……俺の村が……

 俺の妻が……

 “価値が低いから消された”というのか……)


胸の黒核が異様に熱を帯び、

怒りが一気に噴き出しかける。


だが――

ノワがアシェルの腕を掴んだ。


――あしぇる

――きみ が こころ で たたかう と

――“まける”


アシェルは息を荒くしながら問い返す。


「……どうすればいい……」


ノワの声は震えていた。


――“きみ を はかる こと” に

――きみ が こたえない こと

――にんげん は “きめる もの”

――せかい に “きめられる” の じゃない


アシェルは静かに目を閉じた。


(価値……

 塔は俺を従わせたいんじゃない。

 “価値で判断される存在”に落とし込みたいんだ)


深く息を吐き、ゆっくりと目を開く。


そして――

アシェルは塔に向かって、はっきりと言った。


「俺の価値を、お前が決めるな。」


塔の声が静まり、

空間が一瞬、停止した。


アシェルは続ける。


「俺は消される存在じゃない。

 俺は……俺の選んだ存在理由で立っている。

 村のためでも、妻のためでもない。

 俺は俺の意思で、お前たちを“否定”するために歩いてる」


ノワが涙のように影を揺らした。


――あしぇる……


塔が反応した。


『評価値、再計算。

 “存在理由:自己決定”。

 基準外の思想を検出。』


空間が大きく揺らぎ、

黒い柱が砕ける。


塔の声が警告音に変わった。


『判定不能。

 対象は選別不能。

 第二層の処理基準に適合しません――』


アシェルは一歩踏み出し、

黒核を柱に向けて解放する。


「だったら――

 俺が、お前を選別してやるよ」


黒核から奔る黒い光が柱を貫いた。


ズガァァァァン……!!


白の空間が裂け、

下層への落下道が開く。


塔が揺れながら告げる。


『……価値破壊者。

 あなたの存在は……塔にとって危険です……』


アシェルは薄く笑った。


「そうだろうな。

 俺は“価値で命を測る世界”を壊しに来たんだ」


ノワが寄り添う。


――あしぇる

――つぎ は “もっと ふかい とこ”

――きみ の ちから が

――ためされる


アシェルは落下の光へ身を投じた。


その瞳には、

もはや迷いも後悔もない。


ただ――

壊すべき思想の中心へ進む覚悟だけがあった。

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