表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カーディア  作者: アデル
第一章 第三項 復讐者の旅路・序章
41/83

11

『第一層:因果ループ領域』


 


アシェルとノワは、塔内部の螺旋廊下を進んだ。


だが――異変はすぐに表れた。


一つ角を曲がる。

階段を上る。

扉を開ける。


……また同じ廊下。


ノワが呟く。


――あしぇる

――“すすんでいない”


アシェルも気づいていた。


(これは……空間のループじゃない。“因果”のループだ)


足跡を残しても消える。

時間の流れは正常なのに、“結果”だけが巻き戻される。


――つまりこの階層は

 “到達という因果”を固定されている。


どれだけ歩いても、

“到達しない未来”が上書きされるのだ。


ノワが影を震わせる。


――わな だ

――そと の にんげん は

――ここ で くずれる


アシェルは静かに息を吸った。


「分かってる。

 普通の人間なら、この循環で精神を削られる。

 でも……」


黒核が胸で脈打つ。


「俺は“原因と結果の接続”そのものを揺らせる」


ノワが嬉しそうに囁く。


――あしぇる の ちから は

――“みらい を ほどく”


 



◆繰り返される廊下――精神を揺さぶる仕掛け


ループが進むほど、

廊下に“異常”が混ざっていった。


三回目のループ:

壁に微かに赤い線が走る。


五回目:

誰かの足音が背後で追いかけてくる。


七回目:

天井から“見えない者”の視線が落ちてくる。


ノワが警戒する。


――この かそう は

――“いしき を のまれた もの” の ざんきょう

――きみ を さそっている


アシェルは歩みを止めない。


(塔は“精神を折る”ことより

 “特定の反応を引き出すこと”を目的にしている……)


白衣の観測者の声が脳裏で反響する。


『進化を見届けよう。』


(……塔は俺を進化させたい?

 なら――拒絶して壊す)


 



◆ループを断つために必要なもの


アシェルは立ち止まり、

壁に手を触れた。


瞬間――

黒核が強烈に反応し、

壁から因果構造の“線”が見える。


“この廊下が固定化される原因”

“ループを成立させるための接続点”

“未来を封じるための歪み”


アシェルはそれらを直感的に掴んだ。


「……ループは“未来の停止”で維持されている」


ノワが問う。


――どう きる?


アシェルは小さく息を吐いた。


「未来が閉じられてるなら、

 逆に“過去を奪う”」


ノワが目を瞬かせる。


――……?


「未来がなくても、俺の力は結果に介入できる。

 この廊下の“過去の状態”を削れば、

 塔が固定している現在が維持できなくなる」


つまり――

廊下そのものを“存在する以前に戻す”。


アシェルは黒核に語りかける。


「――融解ディゾルヴ


空間が震えた。


壁の模様が消え、

床の材質が崩れ、

天井の曲線がゆっくりと形を失う。


ノワが驚いた声を上げた。


――あしぇる……!

――この かんかく……

――きみ の ちから が “せかい に ささってる”!


アシェルは言った。


「ループの構造が壊れれば……

 塔は次の階層を“強制的に開く”しかない」


 



◆ループが崩壊し、道が開く


廊下が軋むような音を立てて崩れていく。


消えていく床。

溶けていく壁。

伸びたはずの廊下が短く折りたたまれ、

白い光の裂け目が開いた。


ノワが囁く。


――あしぇる

――“つぎ の かそう” が みえる


アシェルは歩み出した。


すると、塔が反応したように震えた。

高い警告音が響く。


キィィィン……


『侵入者、因果ループを突破。

 予測値を超過。

 “進化判定”継続。』


塔が“評価している”。

まるでアシェル自身を。


アシェルは冷笑する。


「評価しろ。

 俺はその未来ごと、お前を壊すために来た」


ノワが影の手を握り返す。


――あしぇる

――いこう

――この たてもの の こころ を

――やぶる ため に


アシェルは光の裂け目へ踏み込んだ。


塔の“第二層”が開く。


塔は彼の侵入を拒みながらも、

まるで期待するように姿を変え続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ