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カーディア  作者: アデル
第一章 第三項 復讐者の旅路・序章
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2

『空白を追う者――白衣の影』


 


コール村で見つかった“記録の空白”。

アシェルはその前に立ち、目を細めた。


壁に刻まれた家系図の中央。

そこには“誰かの名”があったはずなのに、

痕跡が完全に消えている。


ノワがアシェルの肩越しに揺れた。


――これは

――“さき に きえた もの” と おなじ きず


「俺の村が消えた時と……同じ因果痕跡だな」


アシェルは指先を空白にかざす。


(触れる……?

 いや、違う……ここにはすでに“線がない”)


ノワが補足する。


――けずられた の では なく

――“はじめ から なかった” よう に された


アシェルは寒気を覚えた。


消すのではなく――

初めから存在しなかったことに書き替える力。


それはアシェルの敵が持つ力そのものだった。


(……やはり、いる。

 俺と同じ“因果の深層に触れた者”が)


 



 


◆村人たちの噂


村の広場で、老人たちが不安げに話している。


「また白衣の連中が来たらしい」

「東の研究塔から来ているんだと」

「消えた家族を探してくれるって言ってたが……」

「むしろ、あいつらが何かしてるんじゃないか……?」


アシェルは足を止める。


「白衣……?」


ノワが応える。


――におう

――つよい におい が する

――“そと の いんが” の におい


(外の因果……?

 この国の研究者じゃないってことか?)


村人の一人がアシェルに声をかける。


「お兄さん、旅人かい?

 もしあの白衣連中に会ったら……気をつけるんだ。

 なんだか“人の形をしていない時がある”って噂もあってね」


アシェルは小さく頷いた。


(それは……因果が薄いか、形を保てないってことか……

 人間ではない可能性もある)


 



 


◆夢の中のノワ


その夜。


コール村の外れで寝床を作ったアシェルは、浅い眠りに落ちた。


夢の中で、ノワがはっきりとした姿で立っていた。


黒い輪郭ではなく――

“人型に近い影の少年”。


アシェルは驚いた。


「ノワ……お前……形を持てるのか?」


ノワは静かに頷く。


――きみ が ねがう と

――われ は かたち を える

――きみ の いし が

――われ の ほね を つくる


(……俺の感情で、ノワが成長する……?)


「もっと人間の形に近づくのか?」


ノワは少し首を傾げて言った。


――ひと の かたち を のぞむ?

――きみ は ひと に にている から


アシェルは表情を曇らせる。


「……俺は本当に“人”なんだろうか」


――ひと で ある か は

――きみ が きめる


夢はそこで途切れた。


 



 


◆目覚め――残された“白い繊維”


朝日が差し込む。


アシェルは目を開け――息を呑む。


寝床の脇に、

細い白い繊維の束が落ちていた。


手にとると、異様に軽い。

そして触れた瞬間――

因果の“奥側”がざらつく。


(これは……人の記録じゃない……

 人工の……いや、もっと違う……)


ノワが警戒した声を発する。


――これは

――“あの しろい もの” の のこり

――きえた もの の かけら


アシェルは目を細める。


(やっぱり、この国に“因果消去者”がいる……

 村を消した技術が、もう一度使われている)


胸の奥で熱が燃える。


(追う。

 絶対に追い詰める)


ノワの影がアシェルの横で揺れる。


――きみ の ねがい が つよく なる

――せかい が また ゆがむ


アシェルは躊躇しなかった。


「ゆがんで構わない。

 俺は……復讐のために歩いている」


ノワは、一瞬だけ

“誇らしそうな気配”を放った。


――では ゆこう

――“しろい ものたち の す” へ


アシェルは白い繊維を握りしめ、

東へ向かって歩き出した。


それは、復讐の第一歩。

そして、因果の深淵へ向かう始まりだった。

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