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カーディア  作者: アデル
第一章 第二項 軍訓練期
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20

『初陣――復讐者の歩み』


 


森の深夜は湿り気を帯びていた。

月の光すら届かず、空気は静かに沈んでいる。


アシェルは一本の倒木の上に立ち、

遠方で響く軍用車両の音を聞いていた。


(来る……

 この森ごと包囲する気だ)


ノワの影が足元で揺れる。


――きみ を とらえる ために

――せかい が うごいている


(わかってる……だけど、俺は止まらない)


胸の核は熱を宿し、

すでに“力を使う準備”を始めていた。


 



 


◆オルドとカンデル、最後の告げ口


森の端で、オルドとカンデルは息を整えていた。


「……ここから先は、行けない」


オルドが森の奥を見つめながら言う。


カンデルが歯を食いしばる。


「なんでだよ……!

 俺たちが一緒じゃなきゃ、あいつ――」


「私たちが近くにいれば、軍が遠慮なく攻撃してくる。

 アシェルを守るには、私たちはここで線を引くしかない」


カンデルは拳を握る。


「クソッ……!

 アシェル、絶対生きろよ……!」


オルドは静かに頷く。


(アシェル……私が守れなかった未来を……

 自分でつかんでくれ……)


 



 


◆軍の包囲網


森全体がざわめいた。


斥候が散開し、

ドローンが低い音を響かせて飛ぶ。


「対象は森の奥。

 逃走経路を塞げ!」


「因果遮断装置を三層に展開!

 逃げ道をゼロにしろ!!」


軍は本気だった。

“一個人の排除”に、ここまでの戦力を出すのは異常。


だが、誰もが知っていた。


――アシェル・レイヴは、“存在災害”の始まりである。


そして、森の中心へ迫る。


 



 


◆アシェル、因果を“見る”のではなく“使う”


軍用照明が森を照らす。


兵士たちの因果線。

銃の未来。

包囲網の完成予定時間。

この森にある“全ての未来”が、アシェルの目には線として見えた。


(今までは“見て”いただけだ……

 でも今は――)


胸の核が強く脈動する。


(“選べる”)


ノワの声が重なる。


――せん が みえる

――せん が えらべる

――せん が つくれる


アシェルは片手を前に突き出した。


目の前の空間が波打つ。


――パキ……パキパキ……


世界の線が折れ、

軍の包囲網の“未来”が少しずつ崩れていく。


兵士たちが悲鳴を上げる。


「なんだ!?

 地面が……先に進むほど形が違う!!」


「隊長、予測地点と地形が一致しません!!

 世界がズレてます!!」


アシェルは声を放つように言った。


「俺を追う未来は――壊す」


その瞬間。


軍が作り上げた包囲の“流れ”が逆流した。


ドローンが墜落し、

一部の兵士は足元の因果がねじれて膝をついた。


これが――

アシェルの因果操作の完成形の最初の一歩だった。


 



 


◆ノワの正体の影


アシェルの横に立つノワは、

黒い影のまま森を見渡していた。


兵士の因果線を見抜き、

“触れた瞬間、結果が崩れる点”を示している。


まるで――

世界の因果構造そのものを熟知している存在。


アシェルが問う。


「ノワ……お前は……何者なんだ?」


――われ は

――“かつて あった せかい の かけら”


アシェルは息を呑む。


(世界の……欠片……?

 どういうことだ……?)


ノワは静かに続けた。


――きみ が ねがう なら

――すべて を おしえよう

――ただし

――“てにいれた すべて の のち” に、だ


まるで――

アシェルの復讐の行く先を知っているかのようだった。


 



 


◆アシェル、復讐へ踏み出す


森の包囲を抜けた時、

アシェルは夜空を見上げた。


「俺は必ず見つける。

 村を消した因果兵器……

 妻を奪った“あの力”の持ち主を……」


胸の核が応えるように揺れる。


ノワも頷く。


――きみ の ねがい は

――われ の ねがい

――ゆえに あるこう

――“ふくしゅう の みち” を


アシェルは振り返らずに歩き出した。


基地の燈火は遠ざかり、

暗闇がアシェルを包む。


(ここからが……俺の始まりだ)


その背中を、

世界そのものが“注視”していた。


第二項――【軍訓練期】終幕。

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