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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第二章 灯火 - Torch -

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緊急特別総会 - Emergency Special Session - 2

◯シオン国・エルサレム市・国防省複合施設・参謀本部・食堂


シオン国防軍参謀本部に併設された食堂で、参謀総長以下、将校や兵士たちが朝食をとっている。


参謀総長は副参謀総長と向かい合い、湯気の立つコーヒーを口にしながら、午前に行われる軍議に向けて最終確認を行っている。


参謀総長の斜め後方に、唐国仙道士部隊隊長が高速移動で現れる。

「参謀総長殿」


仙道士部隊隊長、右手の拳を左手で包む拱手礼を行う。

「ご報告申し上げます。

カナン地区南検問所にて、不測の事態が発生。

現在、斥候を派遣し、状況を確認中です」


「…何だと?」

参謀総長、コーヒーカップを置く。


その直後に、斥候の仙道士が高速移動で現れ、即座に拱手礼を行う。

「申し上げます!

カナンの騎馬小隊、5隊が国境を突破!

北、北東、東、南東、南の5方向へ分散し、現在、我が国領内を侵攻中です!」


参謀総長、椅子を蹴るようにして立ち上がる。

「…馬鹿な。

カナン人が、大掛かりな攻勢に出たというのか」


仙道士部隊隊長「参謀総長殿。

仙道士部隊は、即応体制にあります。

この5隊、全て砲撃可能です」


参謀総長、短くうなずく。

「よし。市街地に到達する前に、テロリスト集団を一隊残らず殲滅せよ」


仙道士部隊隊長「はっ!」


参謀総長、食堂に居る地区司令官たちに命じる。

「全地区、直ちに都市警備を強化!

警戒態勢に入れ!」


椅子の音が響き、司令官たちが一斉に立ち上がる。



 ✕ ✕ ✕



◯エンパイア国・アテナイ市・世界連帯構想本部・会議棟・ロビー


エンパイア国の学術の中心都市、アテナイ市にある世界連帯構想本部の大きなビル。

その中央に位置する、加盟国代表団が集う総会ホールを擁する会議棟。


正面入口の大扉をくぐると現れる広々としたロビーを、事務局の職員たちが慌ただしく行き交っている。


進行表や参加国名簿を手に、議場の最終確認を行っていた総務部のルーカス、アヴェスに気付いて声を掛ける。

「アヴェス君! 今日の演説の健闘を祈っているよ」


アヴェス「ありがとうございます。精一杯やります」


議場で配布する大量の文書を抱えた法務部のティボーと政治部のステファンが、階段へ向かう途中で、アヴェスと鉢合わせる。


ティボー、アヴェスの顔を見るなり、

「俺は…悔しい!

会議中は法務部デスクで待機番だ。お前の晴れ舞台を見たかったのに!」


片手で文書を押さえつつ、もう一方の手で、がしっとアヴェスの手を握る。

「世連総会で演説する機会など滅多にないぞ。思い切りやってこい」


アヴェス「は…、はい…」


ステファン、ニヤニヤしながら、アヴェスにプレッシャーをかける。

「俺は、議事録補佐で議場に居るぜ。

君の名演説を、一言一句漏らさず書き留めてやるよ」


 ✕ ✕ ✕


ロビーの一角に、魔道士協会(ギルド)の魔道士たちが集合している。


加盟国代表団の警護係、輸送及び伝達係、会場の警備係、そしてルイ率いる防衛部隊の魔道士たちが、ダイアナと上司を交えて最終打ち合わせを行っている。


魔道士たち、普段の鼠色のローブではなく、世界連帯構想の制服を身に付けている。

紺地の長衣の胸元と背には、オリーブの枝と鳩の翼を組み合わせた白いマークがあしらわれている。

平和を象徴する世連のマークが、集団で並ぶとひときわ鮮明に浮かび上がる。


 ✕ ✕ ✕


魔道士協会(ギルド)の担当者たち、最終打ち合わせを終え、それぞれの持ち場へ高速移動していく。


上司と別れたダイアナに、アヴェスが近付く。


ダイアナ「アヴェス、そろそろ時間じゃない?」


アヴェス「…少し、いいか?」


アヴェス、ダイアナの手を取り、小会議室に続く人気のない廊下へ連れていく。



◯会議棟・ロビー・人気のない廊下


ダイアナ「どうしたの?」


アヴェス立ち止まり、ダイアナをじっと見つめる。

「その制服、いいな」


ダイアナ、頬を染める。

「…ありがとう」


ダイアナ、アヴェスの手のひらが緊張のために汗ばんでいることに気付く。


そっとその手に自分の手を重ね、励ますように微笑む。

「…今日、頑張って。

カナン地区が承認されるよう、祈ってる」


アヴェス、瞳を閉じ、うなずく。

「…うん。…祈ってて」


翡翠色の瞳を開く。

「──今日、承認させてみせるから」



 ✕ ✕ ✕



〇シオン国・南東の平野


乾いた平原を、風を切って(はし)るハイファ県の騎馬隊。

先頭を行くハイファ県首長の槍には、4色の旗が鮮やかにはためいている。


──シュウゥゥゥ…


ドガァァンッ!!


騎馬隊のわずか数メートル側方に砲弾が落ち、土柱が噴き上がる。


隊員たち「!!」


ハイファ県首長、舌打ちする。

「もう捕捉されたか…!」


速度を緩めぬまま、隊員たちに指示を飛ばす。

「これより、常に上空を監視しろ!

風切音を逃すな! 砲撃を潜り抜けながら進むぞ!」


再び加速した騎馬隊を狙って、砲弾が飛来する。


隊員1「来るぞ、砲撃だー!」


ハイファ県首長「散開っ!」


騎馬隊、左右へ、パッと散る。


ボッォン!


先ほどまで騎馬隊が駆け抜けていた地面が破裂する。


ハイファ県首長「その調子だ! 止まれば標的になるぞ!」


ハイファ県の騎馬隊、隊列を立て直し、再び南東に向けて突き進む。

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