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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第二章 灯火 - Torch -

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病院 - Hospital - 3

◯カナン地区・ハーン・ユーニス県・ハーンユーニス市・ナセル病院・中庭


ハーンユーニス市の市場で買い物をしたカリドたちが、鍋と食材を抱えて戻ってくる。

「今夜は豆のスープにしよう」


わっ、と子供たちがカリドとユスフの周りに集まる。


カリド「井戸から水を汲んできてくれるか?」


子供たちが我先にと井戸に向かって駆け出す。



◯ナセル病院・受付(夕方)


院内学級を終えた女教師たちが、受付カウンターに寄り、挨拶をする。


受付「子供たちの反応はどうでしたか?」


テクラ、笑顔で答える。

「みんな熱心に参加してくれました。明日も、同じ時間に伺います」


受付の職員も笑顔を返す。

「それは良かったです。明日もよろしくお願いします」


女教師たち、出入り口を抜け、中庭へ向かう。


女教師たちと入れ違いに、一人の男がよろめきながら出入り口から入ってくる。


男、受付カウンターの近くまで来ると、へたり込んでしまう。

前に進もうとして這うと、床に血を擦った跡が残る。脚を撃たれている。


「どうしました!?」

受付からの呼び出しで、看護師たちが駆けつける。


男、息も絶え絶えに喘いでいる。

「病院の周りにシオン兵がうようよしている。

俺の前を歩いていた妊婦が、撃たれた。

助け起こそうとしたら、俺も撃たれた。

…残念だが、妊婦は即死だった」


看護師たちが、男を担架に乗せて外科病棟へ運んでいく。


受付の職員、用心しながら病院の門の様子をうかがう。

「…兵士の姿は見えない。でも、見張られているのかもしれない。私たちも病院の外に出たら撃たれるかも…」



◯ナセル病院・中庭


ユスフ「ほら、できたぞ」


焚き火にかけた鍋の中で、豆のスープがぐつぐつと煮えている。

子供たちが歓声をあげる。


ユスフ、ヤットにお玉を渡す。

「子供たちによそってやれ」


自分の椀を持った子供たちが鍋の前に並ぶ。ヤットが一人一人によそい、ミロが手渡していく。


「あら、美味しそう」

女教師たちも戻ってくる。


カリド「みんなで食おう」


ユスフ「パン屋で買ったピタパンもあるぞ」



◯テントの中


皆でテントの中で座り、温かい豆のスープとピタパンで、にぎやかに夕食をとる。


出入り口近くに座っていたミロ、ふと顔を上げる。


テントの外から、誰かが避難民に呼びかけている声が聞こえる。



◯ナセル病院・中庭


中庭の一角で、病院長が避難民たちに向かって呼び掛けている。

「避難民の皆さんに、お知らせとお願いがあります。

先ほど、病院の外で来院者がシオン兵に狙撃されました。

病院の周りに、シオン兵が潜んでいる可能性があります。

安全の確認が取れるまで、病院の外には出ないようお願いします」


避難民たち、不安そうにざわめく。


ユスフ「やっと落ち着けると思ったのに…冗談じゃないぜ」


ヘナン、黙ってユスフの腕をさする。



◯同(夜)


子供たちと女教師たちがテントで休み、男たちはテントの外で毛布を敷いて寝る。


ヤット、ハッと身を起こす。

遠くで、砲撃音が聞こえる。


(…どこだろう。そのうち、病院(ここ)にも来るんだろうか)

ざわざわする胸を押さえながら、再び横になる。



◯同(翌朝)


朝の光が、中庭のテント群を照らし始める。



◯ナセル病院・周辺


避難民たちが目を覚ます頃、

病院がシオン国防軍の一個小隊によって包囲されている。

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