病院 - Hospital - 3
◯カナン地区・ハーン・ユーニス県・ハーンユーニス市・ナセル病院・中庭
ハーンユーニス市の市場で買い物をしたカリドたちが、鍋と食材を抱えて戻ってくる。
「今夜は豆のスープにしよう」
わっ、と子供たちがカリドとユスフの周りに集まる。
カリド「井戸から水を汲んできてくれるか?」
子供たちが我先にと井戸に向かって駆け出す。
◯ナセル病院・受付(夕方)
院内学級を終えた女教師たちが、受付カウンターに寄り、挨拶をする。
受付「子供たちの反応はどうでしたか?」
テクラ、笑顔で答える。
「みんな熱心に参加してくれました。明日も、同じ時間に伺います」
受付の職員も笑顔を返す。
「それは良かったです。明日もよろしくお願いします」
女教師たち、出入り口を抜け、中庭へ向かう。
女教師たちと入れ違いに、一人の男がよろめきながら出入り口から入ってくる。
男、受付カウンターの近くまで来ると、へたり込んでしまう。
前に進もうとして這うと、床に血を擦った跡が残る。脚を撃たれている。
「どうしました!?」
受付からの呼び出しで、看護師たちが駆けつける。
男、息も絶え絶えに喘いでいる。
「病院の周りにシオン兵がうようよしている。
俺の前を歩いていた妊婦が、撃たれた。
助け起こそうとしたら、俺も撃たれた。
…残念だが、妊婦は即死だった」
看護師たちが、男を担架に乗せて外科病棟へ運んでいく。
受付の職員、用心しながら病院の門の様子をうかがう。
「…兵士の姿は見えない。でも、見張られているのかもしれない。私たちも病院の外に出たら撃たれるかも…」
◯ナセル病院・中庭
ユスフ「ほら、できたぞ」
焚き火にかけた鍋の中で、豆のスープがぐつぐつと煮えている。
子供たちが歓声をあげる。
ユスフ、ヤットにお玉を渡す。
「子供たちによそってやれ」
自分の椀を持った子供たちが鍋の前に並ぶ。ヤットが一人一人によそい、ミロが手渡していく。
「あら、美味しそう」
女教師たちも戻ってくる。
カリド「みんなで食おう」
ユスフ「パン屋で買ったピタパンもあるぞ」
◯テントの中
皆でテントの中で座り、温かい豆のスープとピタパンで、にぎやかに夕食をとる。
出入り口近くに座っていたミロ、ふと顔を上げる。
テントの外から、誰かが避難民に呼びかけている声が聞こえる。
◯ナセル病院・中庭
中庭の一角で、病院長が避難民たちに向かって呼び掛けている。
「避難民の皆さんに、お知らせとお願いがあります。
先ほど、病院の外で来院者がシオン兵に狙撃されました。
病院の周りに、シオン兵が潜んでいる可能性があります。
安全の確認が取れるまで、病院の外には出ないようお願いします」
避難民たち、不安そうにざわめく。
ユスフ「やっと落ち着けると思ったのに…冗談じゃないぜ」
ヘナン、黙ってユスフの腕をさする。
◯同(夜)
子供たちと女教師たちがテントで休み、男たちはテントの外で毛布を敷いて寝る。
ヤット、ハッと身を起こす。
遠くで、砲撃音が聞こえる。
(…どこだろう。そのうち、病院にも来るんだろうか)
ざわざわする胸を押さえながら、再び横になる。
◯同(翌朝)
朝の光が、中庭のテント群を照らし始める。
◯ナセル病院・周辺
避難民たちが目を覚ます頃、
病院がシオン国防軍の一個小隊によって包囲されている。




