シルヴィア - Silvia - 1 挿絵
◯バラトール共和国・ケルト市・魔道士協会・校庭(土曜日・午前中)
バラトール共和国ケルト市にある魔道士協会。
広大な敷地にいくつもの建物が立ち並び、乳児から老人まで、魔道士たちが共同生活を送っている。
16歳までの見習いが学ぶ教学棟の広い校庭に、バスのような形状の乗り物が2台停められている。
その横には、カナン地区へ出荷する大量の商品が積み上げられ、コメルコ商会の商人たちが手分けして積み込み作業を進めている。
バスのそばで、シルヴィアとエーリンが3人の女魔道士と顔合わせをしている。
輸送担当の女魔道士「シルヴィー! 久しぶり!」
シルヴィア「えっ?」
シルヴィア、女魔道士たちに囲まれる。
警護担当の女魔道士「修了式以来ね!」
総務担当の女魔道士「〝女魔道士限定の依頼〟って何かと思ったら、依頼人があなただっていうじゃない。すぐ手を挙げたわよ」
シルヴィア「みんな、久しぶりね。元気そうでよかったわ。これからしばらく、よろしくね」
3人にエーリンを紹介する。
「こちらは義姉のエーリンさん。現地の案内と通訳をしてくれるの」
エーリン「初めまして。あなたたちはシルヴィアのお友達なのね」
総務担当「ええ。見習いの頃の同級生なんです」
輸送担当「何年ぶりかしら?」
シルヴィア「…20年くらい?」
エーリン「素敵ね!」
もう1台のバスでは、ルイとジェームズが荷物の積み込みを手伝っている。
浮遊で重い荷物を運んでいるルイを見ながら、輸送担当、
「修了してすぐに、あなたがルイと結婚したと聞いて驚いたわ。男子たち、みんなガッカリしてたわよ」
総務担当、ふふふと笑う。
「あなたとルイ、いつも一緒に居たものね」
警護担当「ルイったら、あっという間に昇進しちゃって。少し悔しいけど、でも、とっても良い上司よ」
シルヴィア、微笑む。
「ありがとう。嬉しいわ」
噂されていることに気づいたルイ、照れくさそうに背を向ける。
✕ ✕ ✕
第一便の積み込みが完了する。
シルヴィアとエーリン、バスの屋根に腰掛ける。
昔話に花を咲かせながら、女魔道士たち、バスとともにゆっくりと浮遊する。
✕ ✕ ✕
◯カナン地区・北ガザ県・上空
シルヴィア「空に障壁を張って欲しいの。シオン軍に仙道士が居るんですって。攻撃されるかもしれないから気を付けて」
警護担当、全員に鎧をかけ、東の上空に障壁を張る。
女魔道士たち、がれきに覆われたカナン地区を見下ろし息を呑む。
シルヴィア、ルイの作ったシェルターを指し示す。
◯北ガザ県・ベイト・ラヒア市・アル・シマー小学校・校庭
ルイの作ったシェルターの横で、ゾットとマフムード首長が待機している。
少し離れた場所には、ヤットとミロ、カナンの男たち、女教師たち、大勢の親子が集まっている。
輸送担当、バスをそっと地面に降ろす。
ジェームズも後に続き、アヴェス・イスマイール・イスマイールの従者・コメルコ商会のマシューを屋根に乗せたバスをそっと地面に降ろす。
✕ ✕ ✕
シルヴィアとエーリン、マフムード首長と挨拶を交わす。
シルヴィア「看護が必要な子供はバラトール共和国の魔道士協会で保護します。それ以外の子供は、アッバース国の児童養護施設に避難させます」
マフムード首長「かたじけない。どうか子供たちを頼む」
✕ ✕ ✕
魔道士たちやアヴェス、カナンの男たちが荷下ろしを始め、ゾットの指示でヤットやミロたちが荷物を運び出す。
エーリン、女教師たちに駆け寄る。
「ライラ、テクラ、ヘナン…無事で良かったわ!」
ライラ「エーリンさん」
エーリンと女教師たち、抱き合って再会を喜ぶ。
ゾット「エーリン」
ゾット、エーリンと女教師たちに近付く。
「9才までの子供を送り出したら、残りの子供たちは南部に移動させることになった。
ここの校舎は避難民の住居になる」
ライラ「私たち教師が子供たちを引率することにしました」
ゾット「護衛を4人付ける。そのうち2人はヤットとミロだ」
エーリン、ほっとする。
「そう…。そのほうが安心ね。ゾット、あなたは?」
ゾット「俺はマフムード首長の下に残って、魔道士やお前の息子の通訳をする」
エーリン「ありがとう。…気を付けてね」
ゾット「ああ」
エーリン「あのね…、アヴェスの助けになってあげて」
ゾット、うなずく。
「ああ。わかった」
✕ ✕ ✕
2台のバスの積荷が全て降ろされる。
アヴェスたちとゾットとマフムード首長、ジェームズの指示でバスに乗り込む。
ジェームズ、バスを浮遊させ、カナン地区の首長たちのピックアップに向かう。
✕ ✕ ✕
エーリン、親子連れの集団に手を上げる。
「سوف نبدأ الآن بنقل الأطفال.〈今から子供たちの避難を始めます〉
نرجو أن يتقدّم أولًا الأطفال الذين يحتاجون إلى رعاية طبية.〈まずは看護が必要な子からお願いします〉」
シェルターから、包帯を巻いた子供や砲弾で手足を失った子供たちが運ばれてくる。
エーリンが保護者から名前を聞き取り、シルヴィアが名札を書き、総務担当が子供の服に取り付ける。
輸送担当と警護担当が手を貸して、子供をバスに乗せていく。
子供たちを乗せられるだけ乗せると、シルヴィアとエーリンも乗り込み、警護担当がバス全体に障壁を掛ける。
輸送担当がバスを浮遊させる。
◯カナン地区・北ガザ県・上空
バスが上昇すると、東の上空に張った障壁に砲撃が飛来し爆発する。
バァァァアン!
「キャーッ!!」
子供たちが耳を塞ぎ悲鳴を上げる。
シルヴィアとエーリン、青ざめる。
「今日は安息日なのに…!」
輸送担当「すぐに離脱するわ!」
バスの速度を上げる。
◯バスの中
子供たちが泣き叫んでいる。
子供1「مامااا!〈ママー!〉」
子供2「مامااا!〈ママー!〉」
シルヴィア「大丈夫よ」
エーリン「لا بأس، يا أحبّائي。〈大丈夫〉」
怖がって泣く子供たちを、シルヴィアとエーリン抱き締めて落ち着かせようとする。
エーリン「نحن ذاهبون الآن إلى مكان آمن.〈みんなはこれから安全な場所に行くの〉
هناك ستأكلون جيدًا، ويمكنكم النوم مطمئنين في الليل.〈そこではお腹一杯食べられるし、夜は安心して眠れるわ〉
وسيعتني بكم الأطباء أيضًا.〈怪我の治療もしてもらえるのよ〉」
子供たち泣きながら、
子供3「أريد أن أرى أمي〈ママに会いたい〉」
子供4「أريد أن أعود إلى أمي〈ママのところに帰りたい〉」
エーリン、涙をこらえて笑顔を作る。
「ستلتقون بأمهاتكم لاحقًا…〈ママには…後で会えるわ〉
وعندما تصبح كنعان مكانًا آمنًا، سنعود جميعًا إلى أمهاتكم.〈カナン地区が安全な場所になったら、みんなでママのところに帰りましょうね〉」




