シオン国 - State of Sion - 2
◯シオン国・エルサレム市・首相官邸・応接室
シオン国防軍主席祭司エイラム・カリマン、イスマイールの前に立つ。
「尊貴なる皇太子殿下。シオン教の聖なる律法と、二千年に及ぶ不屈の歩みに基づき、シオン国建国の神聖なる経緯を謹んでご説明申し上げます」
軍主席祭司、静かだが抑揚のある声で語り始める。
「この世に最初に灯された神の光──それこそがシオン教であります。
神が初めて人の耳に語られた言葉。あらゆる啓示の源にして、すべての律法の根。後に現れたあらゆる教えも、ただこの光を映す影にすぎません。
シオン教徒は、神に選ばれ最初の契約を授かった民──それこそが我らの信仰の尊さであり、我らが背負いし永遠の証にございます。
我らの聖典はこう記しております──
『カナンの全地を永久の所有として汝と汝の子孫に与える』(創世記第17章8節)
この地は神自らが所有される聖域にして、我らシオンの民の揺籃の地。神と預言者、そして我らの先祖との永遠の契約により、シオン教徒に与えられた〝約束の地〟です。
三千年前に、神の命により、我らの王はエルサレムを都と定め、神殿を築き、神の栄光を讃え奉りました。しかし、やがて訪れたエンパイア国の暴虐により、神殿は破壊され、我らは祖国を追われて流浪の民となりました。
それより二千年間──我らは世界中に離散し、数多の苦難、差別、迫害、虐殺や略奪にさらされながらも、神の摂理のもと信仰を守り抜いてまいりました」
軍主席祭司、両腕を大きく広げ、声に力を込める。
「そして今──絶えることなく祈り続けてきた我らに、神は約束を果たされました。
『地の果てに追いやられようとも、神は汝を集め、汝の先祖が所有した地に帰らせ、汝はそれを所有するであろう』(申命記第30章4-5節)と預言されたとおり、我らは再びカナンの地へと帰還し、我らの国を再建したのです。
シオン国建国は、シオンの民にとって贖いの始まりに過ぎません。
この地の平和と安全が確立され、離散していた全てのシオン教徒が帰還し、シオン国民が神の律法に従って生きるとき──シオン国は神の恩寵に包まれ、その光は諸国へと及ぶことでしょう。
これこそが、究極の贖い──神が描かれた永遠の計画にほかなりません」
軍主席祭司、静かに手を下ろす。
「皇太子殿下、シオン教の聖典と神の言葉に根ざした絶対の真理をご理解いただき、シオン教徒の神聖な使命を支持されることを強く願います」
イスマイール、顎に手を当てる。
「…なるほど、それがシオン国建国の正統性か。
しかし、二千年前に全ての者がこの地を去ったというのは、必ずしも事実ではない。残ったシオン教徒は、良き隣人としてカナン地区で共存していただろう。
今更シオン教徒のみで土地を占有して事を荒立てることもなかろう?」
シオン国首相イツハク・ベンダビッドが、代わりに答える。
「恐れながら申し上げます、皇太子殿下。我々シオン教徒には、それ以外の道はございません」




