表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第二章 灯火 - Torch -

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/60

シオン国 - State of Sion - 1

◯カナン地区・北の検問所(日曜日)


アヴェス・イスマイール・イスマイールの従者・ニザーム・ルイ、カナン地区から検問所に近づく。

検問所にはテーブルが置かれ、警備兵が椅子に座っている。


警備兵、フスハー語で声を掛ける。

「カナン人か?」


ニザーム「いいえ、私たちは違う」


ニザーム、前に出る。

「こちらは、偉大なるアッバース国の皇太子、知識と勇気の守護者、イスマイール・イブン・ハーリド殿下である。皇太子殿下は見聞を広げるために諸国を巡遊されており、この度、シオン国の指導者との面会を希望されている。その旨、上官へ伝達されたい」


途端に警備兵、鋭い視線でイスマイールとニザームの身なりをジロジロと確かめる。


「しばらくお待ちを」

警備兵、上官に報告に行く。


アヴェス「王族って身分、使えるな」


イスマイール、ふふんと笑う。

「そうだろう」



◯シオン国・エルサレム市・新市街


一行、シオン国が用意した馬車(コーチ)で、舗装された広い道路を進む。

道路の舗装に使われているベージュがかった石灰岩は、真新しい建物にも使用されており、街全体に統一感をもたらしている。

街路樹にはカナン地区と異なる植生の植物が植えられ、紫色の花が今を見頃に咲き誇っている。

通り沿いの商店はシオン語の看板が掛かり、カフェや屋台が賑わっている。

歩道を行き交う人々の服装は様々で、軍服の袖を捲り上げた若者、黒ずくめの服の男たち、買い物袋から花やパンを覗かせているスカーフを被った女たち、大荷物を抱えた西側諸国からの移民らしき家族も行き交っている。

街の各所で、最新式の銃を持った警備兵がパトロールをしている。


イスマイール「カナン地区とは景観が全く異なるな…」


警護のために騎馬で並走している警察高官、胸を張る。

「この地を取得してから我々が整備しました。

聖地のある旧市街は昔ながらの街並みを残してあるので、もう少し道が入り組んでいますよ。

ああ、見えてきました」



◯エルサレム市・旧市街近く


丘の上に差し掛かると、歴史を感じさせる古い建物群の尖塔と、黄金の丸屋根が見える。

時を同じくして、前方から大合唱が聞こえてくる。


シオン教徒1「シオンの民は生きている!」

シオン教徒2「カナン地区を破壊しよう!」

シオン教徒3「奴らの預言者は死んだ!」


手に手にシオン国の旗を持った大集団が見えてくる。


シオン教徒4「カナン人に死を!」

シオン教徒5「あいつらの村を焼き払え!」


シオン教徒たちが声を合わせて叫び、旧市街の門に向かって続々と集まり行進している。

集団の中心では、歓声を上げ指笛を吹き鳴らし、肩を組んで飛び跳ねている若者たちがいる。

皆一様に高揚した表情をしている。


ニザーム「あの者たちは…?」


警察高官「今日はシオン国の記念日なのです。故郷を追放されて流浪の民だった我々が、聖地を奪還して独立を宣言した記念日なので、行進して祝っているのです」


集団から少し離れた場所で、恰幅(かっぷく)のいい男が手を振っている。男に気付いたシオン教徒たちが大きく手を振り返している。


「レオニード・カプラン国家治安相です」

警察高官、国家治安相に向かって敬礼する。


国家治安相、警察高官に気付き答礼する。

「そちらは?」


警察高官「はっ、アッバース国皇太子イスマイール・イブン・ハーリド殿下御一行でございます。これから首相官邸にて首相と面会されます」


国家治安相、車中のイスマイールに胸に手を当て挨拶する。

「私も同席しよう」



◯エルサレム市・首相官邸前


直線的でモダンな外観に、赤く塗られた壁が印象的な建物の前で、馬車が停まる。

アーチ型の玄関の前には、シオン国の国旗がはためいている。


警察高官「首相官邸です」



◯首相官邸・玄関前


出迎えた職員、エスペラント語で「皇太子殿下とお付きの方々のみご面会いただけます」


イスマイール、アヴェスの肩を掴む。

「こいつも従者だ」


アヴェス、むっとするが黙っている。



◯首相官邸・応接室


ルイは官邸の外で待機することになり、ルイ以外の一行が応接室に通される。

応接室の内装もシンプルでモダンな作りになっている。


室内に居た数人の男が立ち上がる。


一番奥に居た小柄な男が歩み寄る。

「ご高名なる皇太子殿下、シオン国建国以来、初めての御訪問を心より歓迎いたします。

シオン国首相イツハク・ベンダビッドです」


イスマイール「アッバース国皇太子イスマイール・イブン・ハーリドだ。

ベンダビッド首相、突然の訪問にもかかわらず、このような場を設けていただき感謝する」


首相「とんでもございません。アッバース国は自由と交易において大いなる影響力を持つ大国であり、我が国の民もその恩恵を受けております。本日の御訪問が、両国の理解と友好を深める第一歩となることを願ってやみません」

イスマイールと握手を交わす。


イスマイール、勧められたソファに身を沈める。

「さっそくだが、私は見識を深めるために世界各地を巡っている。

たまたまカナン地区を訪れたところ、父が存命だった頃とは随分と様変わりしていたので気になってな。

一体どのような経緯でこうなったのか、話を聞かせてもらおうと立ち寄った次第だ」


「その件につきまして、私からご説明申し上げてよろしいでしょうか」

黒い帽子を被り、黒いローブを着た男が、イスマイールに挨拶をする。

「皇太子殿下に神のご加護がありますように。

シオン国防軍主席祭司、エイラム・カリマンと申します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ