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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第一章 壁 - Wall -

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首長会合 - Majlis of Sheikhs - 1

◯カナン地区・北ガザ県・上空(土曜日・午前)


ジェームズ、バスのような形状の乗り物の屋根に腰掛け、飛行している。

バスの中は造り付けの椅子が30席ほど設けられており、先頭にルイとアヴェスが座っている。


ルイ「ジェームズがディミトリから聞いたところによると、5年前にルーシ帝国で皇帝暗殺事件があったそうだ」


アヴェス「当時、新聞で読んだよ」


ルイ「暗殺グループにシオン教徒が居たことから、ルーシ帝国でシオン教徒に対する大規模なヘイトクライムが起きたそうだ」


アヴェス「それがシオン国建国に関係してるかもしれないってこと?」


ルイ「ディミトリの推測では、そうらしい」



◯北ガザ県・ベイト・ラヒア市・アル・シマー小学校・校庭


ルイの作ったシェルターの横で、ゾットとマフムード首長が待機している。

ジェームズ、バスをそっと地面に降ろす。

ゾットとマフムード首長、ジェームズの指示でバスに乗り込む。



◯カナン地区・西側の地域


ジェームズ、マフムード首長の案内に従ってバスを移動させる。

カナン地区西側の残りの4つの県を巡り、首長を一人一人乗せていく。

北ガザ県の南に位置するガザ県では、多数のテントから成る大規模な難民キャンプが形成されている。



◯カナン地区・東側の地域


ジェームズ、シオン国の上空を迂回して、東側の地域に移動する。

東側の地域は、山地や丘陵が広がり、数多くのオリーブ畑やブドウ畑、耕作地が見られる。

東側の地域は11県あり、その広さは西側の10倍以上に及ぶ。

ジェームズ、新たに乗り込んだ東側の首長の案内に従って各県を巡り、首長たちを乗せていく。

3年振りに顔を合わせた西側と東側の首長たち、互いに握手と抱擁を交わし合い、近況を報告し合っている。


アヴェス、青々としたオリーブ畑で半分近くの木が伐採されていることに気付く。

「オリーブは、実を取るだけじゃなくて、木も何かに利用するのかな?」


ラマッラー・アル・ビーレ県の首長の話を聞いていたゾット、アヴェスに説明する。

「あれは、シオン教徒が切り倒したものらしい。シオン教徒がオリーブ畑を潰して村人を追放し、その土地に入植するそうだ。焼き打ちされた村もあるらしい。

東側の地域では、シオン教徒が武力を伴って入植し、シオン軍が入植地とシオン国を結ぶ道路を作っているそうだ」



◯カナン地区・東側の地域・草地


ジェームズ、カナン地区東側の開けた草地にバスを降ろす。

ルイとジェームズ、バスの外に立って周囲を警戒する。



◯バスの中


アヴェスを司会進行役として、カナン地区の首長会合が始まる。


アヴェス「皆さん、はじめまして。世界連帯構想職員アヴェスと申します。

世界連帯構想は、シオン国の侵攻を止める最善の方法は、カナン地区が世連に加盟することだと考えています。

そこで、今回の会合の場を設けさせていただきました。

皆さんに話し合っていただきたい議題は3つです。

カナン地区の子供たちの避難の可否、世連加盟の可否、そして国家元首となる議長の選出です」


ゾットがフスハー語に通訳する。


首長たちが一斉に侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を始める。


 ✕ ✕ ✕


ゾット、アヴェスに「俺が聞いている限りでは、首長たちの力関係は拮抗している。議長の選出は時間がかかるかもしれないぞ」


アヴェス「そうですか…。あれから、シオン国からの攻撃は変わらないですか?」


ゾット「変わらない。北ガザ県から住人を追い出すための砲撃と攻撃が続いている。

それに加えて、手足を切断される住民が増えている」


アヴェス「えっ?」


ゾット「小さな金属が入った砲弾が飛んでくるようになった。爆発すると、金属の小さな破片が手足に刺さり、血管や神経を損傷する。そのため、手足を切断せざるを得ない。足が無いから逃げられないまま砲弾の餌食になる者もいるし、切断面に感染が起き、じわじわと死んでいく者もいる。

俺は兵器に詳しくないが、カナン地区は…まるで…、新兵器の実験場のようだと感じる」


アヴェス「…早く…なんとかしないと」


アヴェス、首長たちに声を掛ける。

「結論が出た議題はありますか?」


マフムード首長「世連加盟は全員賛成、子供たちの避難も全員が希望している。

ただ、避難の資金源と、議長の選出が難航している。

前も言ったが、どの首長も自分の地域を守るのに手一杯だ。資金のほうも長引く戦闘で底を突いてしまっている」


アヴェス、手のひらが汗ばんでくる。

(俺は無力だ。

学生だし、財力も無いし、生まれ持った権力も無い。

カナン地区の力になれるものは何も持っていない)


「すっぱり手を引け」

イスマイールの言葉を思い出す。


アヴェス(…でも)


(破壊されたカナン地区を見てしまった。

多くの人が亡くなっていることを知ってしまった。

痩せた子供たちをなんとかしてやりたいと思った)


拳を強く握る。

(何もしないでいることは、できない)


アヴェス、胸が熱くなる。腹に力を入れる。

「カナン地区の世連加盟と、子供たちの避難の資金調達、私に任せてもらえないでしょうか」


首長たち、ざわつく。


アヴェス「カナン地区が世連に加盟するまで、資金調達と国家元首を、私に任せてもらえませんか?」

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