小学校 - Primary School - 3
◯アル・シマー小学校・1階・空き教室(午前中)
授業に参加しない幼児たちが、それぞれの作業に熱中している。
おもちゃの銃で遊んでいる子、外で拾ってきたがれきを積み上げては崩している子、真っ黒な絵を描いている子。
エーリン、その様子を見て胸を痛める。
エーリン、壊れた人形で遊んでいるラシャーに話しかける。
「ラシャー」
ラシャー、顔を上げる。
「家族が居なくなって寂しいよね」
ラシャー「…うん」
エーリン、ラシャーの隣に座る。
「私の家族もね、私を残して皆、死んだの」
ラシャー「えっ」
エーリン「私も、とても悲しくて寂しかった」
ラシャー「……」
エーリン「ラシャー、抱っこしてもいい?」
ラシャー「…うん」
エーリン、ラシャーを抱き寄せ、背中をポンポンとする。
「とてもとても悲しくて寂しくてたまらなかったけど…、私はその後も生きて、大好きな人と結婚して、子供を産んで、今は幸せなの。
だから、ラシャーもきっと幸せになるわ」
ラシャー「……」
エーリン「もし、ラシャーが寂しくなったら、私が抱っこするから。
いつでも抱っこするからね」
ラシャー、エーリンの腕の中で、
「…うん」
3歳くらいの女の子が近付いてくる。
指をしゃぶってエーリンとラシャーを眺めていたが、エーリンの前で腕を広げる。
エーリン、その子も抱き寄せる。
◯1階・大教室(昼)
「給食だ」
ゾットと息子たちが温かい豆のスープが入った大きな寸胴鍋を運び込む。
椀を持った子供たちが鍋の前に整列し、ライラとヤキーンが椀によそう。
ゾット、エーリンに近づき、ロマニ語で話しかける。
「大丈夫か?」
エーリン「うん」
ゾット「一日に一度は、俺か息子たちが来るようにする。何かあれば、すぐに言え」
エーリン「ありがとう」
◯アル・シマー小学校・2階・教室(深夜)
就寝中の孤児とエーリン、教師たち。
エーリン、ラシャーに腕枕をして眠っている。
ラシャー、エーリンに抱きついて眠っている。
◯2階・空き教室(日替わり・午前中)
エーリン、空き教室の掃除をしている。
ドオオオン
近くで砲撃音が聞こえる。
エーリン(いつの間にか慣れてしまったわ)
エーリン、窓に近づき、被災した建物から立ち昇る煙を見る。
ふと、建物の間を縫うように移動する集団が目に入る。
揃いの軍服を着た屈強な男たちが銃を構え、統率のとれた動きで、がれきの中を移動している。
視界から男たちが消えたところで、パンパンパンッと発砲音が聞こえ、エーリン、身を竦める。




