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僕の目の前には深い森の中に扉だけがある光景がある。思わず歓声を上げた。
飲み口に見える場所が光りだしてお父さんとお母さんが僕からそれを奪い取った。
僕がしていたようにお母さんがガラスに目を当てる。
「これって、中に模型があってそれを鑑賞するための物かしら」
僕がそれを取り返そうとするとお母さんは僕を押しのける。
「ちょっと、これに入るくらいのミニチュア?これ結構な高級品なんじゃないの?」
お母さんがこわごわとそれをつかんだまま青ざめる。
「持ってきたのまずかったんじゃないか?下手すりゃ窃盗とか言われかねない」
「それ。ぼくの」
お父さんは怖い顔をした。
「拾ったものを猫糞してはいけないんだぞ」
それからため息を一つついた。
「ホテルに連絡して送り返すしかないわね」
お母さんがそう言った。
「そうだな、それしかない。もうこれに触るんじゃない」
そう言ってお父さんは自分の鞄にそれを入れてしまった。
「僕が見つけたのに」
「だから、それは前のお客様の忘れものよ、きっと」
それからお母さんはちょっと怒った顔で言う。
「前の客の忘れ物を回収し忘れたホテルの従業員も悪いわ。ちゃんと着払いで送ってよね」
それから僕は拾ったものを自分の鞄に入れてはいけないと延々と怒られた。
全然楽しくない旅行が終わった。
翌日お母さんは袋詰めにしたあれをコンビニから送り返してしまった。
ふてくされて寝ていたらいつの間にか知らない場所に立っていた。
僕の目の前にはあの扉がある。
僕は扉に手をかけた。
旅は自分の生きたいところに行くから楽しいんだ。
僕は扉に手をかけた。